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□あえかな微笑
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真っ白な「病院」という檻の中。
こんなところにあかねが閉じ込められて、もうどれほどの時が経ったのか。
わからない。
あの日から時の感覚が、俺の中でおかしくなってしまったようだ。
螺子を違えたかのように。
「あかね、今日の気分はどうだ?」
何食わぬ表情を取り繕って、毎日欠かさずあかねの病室に見舞う。
日に日に痩せて青白くなってゆく身体。
今となってはもう上半身を起こしていることすら困難になり、瞼すら持ち上げるのが億劫だというように固く閉じられている。
一見、本当に永遠の眠りについた人間を見ているかのようで。
どうしようもない恐怖に、いつも胸を掻き毟ってしまいたくなる。
「今日はかすみさんたち、来れねえんだと。だから俺だけで来てやったぞ」
おどけた、ふざけた口調は直せない。なぜならそれを直してしまえば、俺が真っ向から認めたようなものだから。
あかねはもう、もとには戻れない…と。
「…ごめんね、乱馬。いつも来てもらっちゃって……」
か細くて脆い声で、あかねが小さく唇を動かしながら言った。
いつからお前、そんなに鹽(しお)らしくなったんだよ。
お前らしくもねえこと、やめろよな…。
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