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□繋がれた手
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 冴え渡る清々しい青空の下を、ハクと千尋は仲良く連れ立って歩いていた。


 一様に綻んでいる表情。


 特にハクなどは、そのまま川にでもダイビングしてしまうそうなほどに浮かれている。(彼は元々川の神なので、実際そうしても何の弊害もないわけだが)


 彼にしてとびきり珍しく、頬の筋肉が攣るのでは…というほどに惜しみなくその筋力を動員された輝かしい笑顔を浮かべている。



 「ハク、すごくうれしそうだね」



 ハクの新妻・千尋が笑い交じりに彼に語りかけると、ハクは愛しい千尋の顔をうっとりと眺める。



 「もちろんだよ。この長い人生の中で、これほどまでに喜ばしい瞬間は数えるくらいしか味わえないだろうからね」



 「ふふっ」


 
 ハクは二十歳を過ぎても未だ十代のころの可憐な笑みを忘れない千尋の笑顔を見て、益々だらしなく頬を緩ませる。



 「…本当に、私ごときがこんなに幸せでいていいのだろうか」


 
 千尋は笑顔のままで、「当たり前じゃない!」と断言する。



 「幸せになる権利は誰にでもあるよ。それに、相手を幸せにしようとする人は絶対に幸せになれると思うなあ」



 「…そうだね。…じゃあ、」



 ハクは千尋の指に自分の指を絡めた。

 恋人時代に千尋に教えてもらった、「恋人繋ぎ」。

 もちろん未だに恋人気分の抜けない(ハクは永遠に抜けないかもしれないが)ふたりは、この繋ぎ方が自然に定着している。



 「これからももっともっと、そなたを幸せにしてあげられるように努力しなくてはね。…そなたと、それから…」



 千尋はそっと下腹部に手を寄せた。

 ハクの一回り大きな手が、その上に優しく乗せられる。



 「…この子のことも、ね」



 千尋がそのあとを引き継いで言って、微笑んだ。









 繋がれた手を決して離さずに、ともに歩いていこう。


 私がそなたを幸せに、そしてそなたが私を幸せにしてくれるから。


 そして今度は私たちの間に未だ見ぬ私たちの子を交えて、


 三人で幸せを分かち合って生きてゆこうね。





end.

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