novels 3

□Bite the bullet
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――神崎直。

俺と君とで、賭けをしようじゃないか。







「この十円玉の表が出たら、君の勝ち。裏が出たら、俺の勝ちだ」



そう言って秋山は、摘んだ十円硬貨の縁を指先で撫でた。

直はその様子を至近距離から見守っている。



「…秋山さん、イカサマしませんよね?」

「しないよ。第一、この至近距離でどう君を欺ける?」



大まじめに、真顔で問うた直を見下ろして、秋山は切れ長の瞳をさらにしならせて微かに笑う。

一切の不正を見逃さんとばかりに、秋山の指先に眼を光らせる直。

同じように三日月を模した秋山の瞳にも、ある種の鋭光が漣の如く拡がった。



「…じゃ、覚悟はいいかい?」

「…秋山さんこそ」



視線が刹那絡み合い、二人はほぼ同時に僅かに視線を逸らした。

秋山の長い指先に玩ばれていた硬貨が、音も無く、漸くそれから解き放たれる。

緩やかに回転しながら、上へ、上へ。

そして重力に遵い再びおなじ軌跡を辿り落ちゆくさまを、ふたりは、固唾を呑んで追う。



永いようで、ひどく短く。


短いようで、ひどく永く。


そう。


それはまるで、ふたり過ごした日々のように。



硬貨が青年の掌へと還ってゆくその瞬間、少女はゆっくりと瞼を下ろした。




To be continued...

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