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□トクベツ
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「飛鳥高校から来た小野妹子です。よろしくお願いします」
軽く頭を下げる。今、僕は黒板の前に立ち、クラスメイトの好奇の視線を浴びている。転校生って物珍しいものな。だけどこうまじまじと見られると何か照れくさい、と手を後ろで組んだ。
「じゃあ妹子はあの空いてる机ね」
太子が指差した机まで歩き、椅子に座った。隣はさっき廊下で会った金髪で、思わず目を逸らしたが、あちらから話し掛けられた。
「よろしくな」
「よろしく…」
「俺、鬼男。んでこいつは曽良」
見た目に似付かわしくない爽やかな態度だと感じた。案外良い奴なのかもしれない。褐色の肌は健康的で、何かスポーツをやっているのかなと思った。
曽良、と呼ばれた僕の斜め前の人はちらっとこっちを向いたが、すぐに前に向き直ってしまった。こっちは無愛想な奴なのかなと探った。
「実は俺たち、お前のこと見かけたことあんだよ」
「え…」
「喧嘩してたろ。花追町の方で」
見られていたのか。僕を退学送りにした暴行事件。きゅと唇を少し噛んだ。
少しだけ開いた窓の隙間から風が入り込んできて僕らの髪を揺らした。
揺れる金色の髪は軽やかで一本一本に見とれる。髪の毛を見ながらぼう、としていた。
話は未だ終わっていないらしく、続いていたが、あとは全て生返事だった。