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□二つめの心臓
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「お前らー、転校生いじめんなよ」
「転校生?」
「妹子、あいつら不良だから気を付けろよー」




僕が転校生だというと二人は驚いた顔をした。何なんだ、と僕は少し口を尖らせる。こいつら予想通り不良だったのか。冷たい視線を向けていたが、閻魔先生の方に向き直る。

今日も皺の多いシャツをだらしなく着ていた。全体的に安っぽい兄ちゃんだと思ったが、パッと見えた重厚な左手首の腕時計は高そうだった。




「今からお前の担任に挨拶行くぞ」
「はい」





短く返事をし、閻魔先生の後をのこのことついていった。後ろからまとわりつく視線が鬱陶しかった。








階段を上ると、前から歩いてくる人の姿が見えた。僕の心臓は、其の人の姿を確認した途端、大きく脈打った。
踏張らなきゃ立っていられないほどドキドキした。ギュッと強く唇を噛み、爪が手のひらに刺さるほど拳を握る。目の奥がつんとしたが、なんとか根性でこらえた。





「あっ、メンマー!」
「誰がラーメンの具だ。閻魔だ」
「あのさ、私のクラスに今日転校生が来るんだって!」
「知ってるよ。こいつだろ」





彼の視線が僕に向けられる。お久しぶりですね、約1500年くらいぶりですか、と言いたくなったが、堪えた。
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