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□必然と偶然
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鬼男はご機嫌にアイスに齧りつき、曽良はアイスを吸いながら、歩いた。
街は人通りが少なく、二人は道の真ん中を進む。
急に鬼男が立ち止まった。
「あれ?今悲鳴みたいなの聞こえなかった?」
「白昼のサスペンスー」
「いや、マジだって」
俺、耳良くてさ、と言い、鬼男は脇の小道にそれた。曽良は鬼男の背中についていく。
少し歩くと、高校生らしき男の子が泣きべそをかきながら逃げ出してきた。鬼男はぶつかりそうになったが、間一髪よけた。
「なんだぁ?」
不審に思う気持ちはさらに強まり、足を急がせた。
更に進むと、高校生たちが喧嘩をしていた。なるほど、と二人で顔を見合わせる。
よく見ると一人対大勢らしい。なんてアンフェアな、と鬼男は思った。しかしその一人はとても強く、身体を自在に扱い、次々と薙ぎ倒していった。
「すげぇなぁ」
「ああ」
最後の一人が地に伏し、アイスを食べながら観戦していた二人は呑気な感想を述べた。
よく見ると小柄な少年だった。漆黒の学ランは近くの飛鳥高校の制服だ。
アクション映画の一場面のような喧嘩を見れて、二人は満足して、元の道に戻った。
「凄かったな」
「飛鳥高校って、不良高なのか?」
「いや、普通じゃない?」
あーゆー異端児ってどこにだっているんだよ、俺達みたいな、と鬼男は笑った。