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□不幸な幸せを教えて
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太子は楽しげに話している。大きな身振り手振りを交え、声は弾むよう。
僕は懐かしくて、笑顔で話を聞いた。たまに打つ相槌を太子は聞いていただろうか。




「あ、そーだ。私の伝説の話はここら辺にしといてっ、妹子は何で喧嘩したんだ?
理由があるんだろ?
お前は理由もなしに人を殴るような奴じゃないもんなー」



突然そんなことを言い出す太子に目が点になった。彼はまっすぐな目で僕を見ていて、目が逸らせない。
僕は心臓がどくどく大きく脈打ってるのを聞いた。わざと冗談めいた返答をする。



「はは、僕のこと何を知ってると言うんです。まだ会って間もないのに」
「わかるよー。私は天才だからな、人の本質を直ちに見抜けちゃうのだ!凄いだろ。妹子は良い奴だ!まっ私の生徒だし」




訳のわからない理論を並べられた。太子らしいと言ったら太子らしい。
僕は何故かくらくらして、床に吸い込まれそうになる。足元を見ると、そこは紛れもなく学校の男子トイレの床で。飛鳥時代の、朝廷の床ではないのだと、現実を見せられた。

単純に嬉しかった。太子は太子のままで、相変わらず僕に優しくて、甘くて。

この人になら僕の心全部預けられる。






「クラスの子がカツアゲ、されてて。別に仲いい子とかじゃなかったんですけど、何か許せなくて。それで…。
ほんと、自分のこういうばか真面目で、融通きかないとこ嫌になります」
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