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□短編寄せ集め
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◆返事のこないメール◆
はぁ、とルークの口から溜息が漏れる。
それはアッシュからの便利連絡網が途絶えて四週間が経った頃だ。
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「今日も疲れたねー」
「そうね、今夜はゆっくり休みましょう」
明るいティアとアニスの声。
その背にガイ、ジェイドと仲間たちが続く。勿論ルークもだ。
「けれども」
ナタリアの声にルークはびくりと身体を振るわせ、心持身構えた。
「アッシュは今、何をしていらっしゃるのかしら」
あぁ、やっぱりとルークは心の中で呟く。
ナタリアの言葉に他の仲間達は「そう言えば最近会ってないな」「ま、大丈夫でしょう。彼も一応は元六神将ですから」と口々に感想を言っていく。
けれどもそれはナタリアの求める答えではなかったようで、彼女の視線がルークに向けられた。
「ルークはどう、思います?」
「え、あ。あははは。大丈夫、なんじゃないか?」
「その、連絡はルークのところには来ていないのですか?」
「い、いや〜。ぜっんぜん!」
それじゃ、俺。疲れたから先に部屋に行ってる。と小走りに仲間達から離れていった。
「…ありゃ、絶対何か隠してるね」
「アニスもそう思います?」
「あの慌てようといい、焦り方といい、ルークは嘘吐くのがバレバレなんだもん」
ルークは下手糞だよね、とアニスがにべも無く言う。
「まぁ、ルークのことです。アッシュの話題になった途端逃げ出したのですから、彼を怒らせた、とかでしょう。それで便利連絡網も来なくなった」
「だろうな」
とジェイドの言葉にガイが苦笑しながら同意する。
最近、ルークの溜息が多くなったのもそのせいだろうとガイが付け加えた。
「ま、そのうちアイツもルークとの喧嘩に飽きて、ひょっこり顔を出すさ」
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慌てて皆から離れたルークは部屋に戻った後も落ち着かないようで、右へ左へと行ったり来たりを繰り返す。
そして、ベッドに倒れこんだ。整えられていたシーツが波打ち、マットレスがぼふ、と抗議の音を立てる。
アッシュからの連絡が来ない。その理由についてルークには大いに心当たりがある。
いや、あり過ぎる。というか、それしか思い当たらない。
四週間前にアッシュに言った言葉。
―アッシュ、俺は
「やっぱり…嫌だよなぁ」
ふぅ、とそこで溜息を吐き、あぁぁぁ、などと意味を成さない言葉を吐き出す。
「フツーに考えて、やっぱり可笑しいし、それに、俺はアッシュのレプリカだし、それに返事がないってことはそーゆーことなんだろうけど…」
ゴロゴロと転がっていたルークがぴたりと動くのを止める。
瞼を閉じ、四週間前に見た紅を思い出しながら呟く。彼には届かないと知りながら。
「この気持ちは本当なんだよ」
お前のことが好き、みたいだ―
***
乙女ルーク