□春美デビュー
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「嘘…。オレが…。正確には、私が、千春の曲を…?」


「そう。…鈴木春美として、曲を作るんだ。千春のデビュー曲を」


「…いいの?」

春美、千春、マネージャー。三人で、撮影現場のHARUKIの楽屋のソファーで向かい合って話す。

前に小さなテーブルを挟んでマネージャーの横に千春。


「うん。困ったトキはお互い様だもン。ね。」


千春は照れ臭そうに言った。


「ありがとう。本当に…。
でも、どうやって…」


「実は、事務所に、今度から新しいコを作曲家としてデビューさせて話題性を持たせたいと頼んだのさ。

ちょうど、千春さんを歌手デビューさせるのに曲を作ろうという話があがっていて、作曲を誰にするか、考えていたそうです。

才能のあるコを、求めてるらしいんで、ぶつけてみましょう。」


「とゆーこと。さっそく作って。」
千春は笑ってそう言うと「テーマは『私』なの」

「…千春が…?」

どういうイメージが…。
自分の感情を入れると、昔のこととかがあって…。


「素直に…。幼なじみだってことを利用すればいいじゃない?」

「…利用…」

ぼんやり考えてると

「色々、忙しいですけど、がんばって!」

マネージャーは優しく言ってくれた。

(うん。がんばるしかない!)

「…わかった。イメージ。わいてきた。
さっそく取り掛かるよ。
作詞は誰が…?」

そういうとマネージャーと千春が顔を合わせて、しばし考えてから

「…聡くんと春美でいいじゃない?」

「え…?ぼ…僕!?」

焦るマネージャー。

「そ!」

当然というように千春は言うと、じゃあ、がんばってね。と言い残して楽屋を去って行った。

二人、残されて、部屋は静まりかえる。

「どうしましょーか。」
「そーだね。千春と言えばどんな感じ?」


少し考えこんでから

「そ…ですね…。

外見は大人しくて、か弱そうなのに、実は強くて、負けず嫌いで…。」

「だよな!それを曲にすればいいんだな!

今までのみんなのイメージ覆してやろーぜ!!」
「ハイ!!」







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音楽事務所の社長室。


「千春さんの新曲のデモテープです。」

聡は音楽会社の社長に楽譜とテープを手渡した。

社長は40代後半だが若々しい。


「どれどれ…。作曲、鈴木春美…。
新人の女か…。どうしてこの子を選んだ?」

「才能があるからです」

きっぱりと答えた。

「……。作詞、鈴木春美…………っ?
大林…聡…。これって君じゃ?!
これはお遊びじゃないんだぞ?!」

「えぇ。そうです。僕です。千春さんと僕は幼なじみなので鈴木春美さんにイメージについて、等を教えて行く内に…」

「…わかった。まぁいい。聞かせてもらおう。」
音声のない曲を聞きながら楽譜を見る。

「……これは…。スゴイ。さっそくレコーディングに入ろう!」


「では、彼女を認めてくれるんですね」


「あぁ、もちろんだ!新人でこのレベルなら、あのGeneration…HARUKIをも越えられる!!」


聡は冷や汗をかいた。

ただでさえ、忙しいのに。HARUKIはもっと忙しくなりそうだ。
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