□正体
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「千春ちゃん、ちょっと。」
廊下で聡は千春を呼び止めた。
「何?聡クン」

昔の呼び方で呼ばれ、つい昔のような返事をしてしまう。




「頼むから、HARUKIくんをイジメないでくれ。」

「何?スキなの?あのコのこと。」

ちょっと意地悪をしたくなるのはイラだっているせい。だって、今、ケンカ中の春美といつも、彼は一緒にいられるから。

「まさか。俺にそんな趣味はないよ。ただ、最近…」
「…そんな趣味って…。まさか、アンタ、本当に気付いてないの?春…HARUKIくんはオンナのコよ?しかも、アンタが良く知ってる鈴木春美ちゃんよ?」





「え…………、ええ!??まさか!?……嘘だろ??


あのコ、確かにボーイッシュだったけど…。」

信じられないという風に頭を右手で抑え「…だって」
「信じられない!サイテーね。あなたって。」
「なんでさ?!気づくわけないだろ!?」
「あのコ、ずっとアンタのこと好きだったのに。」 「っっ!!」
そのまま、聡は硬直して動けない。

千春はそのまま、台本を持って、撮りのためにマンションの部屋の中に入っていった。








「まさか…。まさか…とは思ってたけど…。」
本当だったとは…。と聡は頭を抱えた。
「じゃあ、さっきいいかけたことは…。」

悪いことをした。気付かなかったこととはいえ。

「あのコ。どんな気持ちだったんだろ。」

そう思うと、とてもかわいそうで。重たいものが胸を突き刺さった。
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