小説〜主〜

□理・解
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心がいつになく苦しくて。
涙が伝いそうなくらい、切ない想いが胸を締め付けるのだ。
全て矛盾した、この戦いに。
終わりを告げる鐘が響く。



「ーーーーーーーッ!」
体中に走った激痛。声もでないほどの、痛み。
それが何によって与えられたモノか、一瞬で政宗は理解した。
自分の脇腹に刺さった、一本の、紅い槍。
「……ゆ、き……」
「ま………さ…ど…の…」
刺した相手は他でもない、好敵手の真田幸村。      
幸村は、片膝を地につき、息をあらげながら己の手をーーー性格には政宗の刺された傷を見て。
勝ち誇るでもなく。
必死な形相にもならず。
ただ、ただ、心から愛しむ、儚い微笑を浮かべて。
「さすがに……ござる……まさ…ね……どの……」
と言って、そのまま前に倒れてしまった。
その時 政宗は幸村の胸から腹にかけての大きな傷を見た。
幸村が政宗を刺すのと同時に、政宗は幸村を斬ったのだ。

ようするに、相討ちとなったのだ。
それからしばらくして、倒れた幸村に覆いかぶさるようにして、政宗は倒れた。
「幸村……なぁ、幸村…」
政宗は少しづつ冷たくなりはじめている 幸村の体を片腕で揺さぶった。血を流し続けたままだった幸村はも
う限界だった。
呼吸など既に虫の息。 政宗の声もひどく遠く聞こえる。
それでも幸村は、掠れたか細い声で、「何でしょう」と答えた。

「ずっと戦ってて……思ったんだよ。……オレは…アンタヲ倒したいんじゃない。……アンタを…幸村を、…手にいれたかったんだ」
辛そうな低い声の政宗の言葉に反応したのか、幸村の手が少しだけ、ピクリと動いた。
政宗はそれに気付きながらも続ける。
「殺したかったんじゃない。傷つけたかったんじゃない。ただ、幸村が、…好きだったんだ」
絞り出すような言の葉。やっとの想いで言い終えた政宗の表情は、悲しさに溢れていた。
いま、刺し違えて、ようやく理解したのだ。
ようやく気づいたのだ。己の本心に。
そして政宗は、一番聞きたかったことを幸村に問うた。
「アンタは…どう思ってんだ?真田幸村…」
幸村はその問いをちゃんと聞いていたのか、最期の力を振りしぼり、
「某も……政宗……殿が……好きで…ござった……!」
と答えた。
とても小さな声だけど。
その想いは、痛いぐらい伝わった。
最後の最後に、互いの気持ちを伝えあうことができたのだ、
「…皮肉、だな」
政宗は自嘲的な笑う。
気づくのが遅かった、と思った。

だが、今後悔しても、二人とも、もうすぐ命尽きるのだ。
告白できただけでも、よかったのではないか。
お互いそんな気持ちになった。

「政………むね……どの……。某、さいごに……政宗殿に愛してもらえて…その喜びを抱いて……逝ける……。とても、しあ、わせに…ござる……」
太陽のような笑顔で、幸村がそう言った。
それを見て政宗も、「ああ、幸せだな」とつぶやいて、微笑んだ。


ふと、ひゅうっと冷たい風が二人の間を抜けた。
もう動かなくなった幸村の頭をなでながら。

政宗は、ゆっくりと、その隻眼を閉じた。


            
★作者コメント★
いかがだったでしょうか。初ダテサナデッドエンド…。
死ぬのはやっぱり辛いです。

だから書こうとは思わなかったのですが…。
でも、矛盾スル〜の続編は書きたかったので。
次はギャグになるといいな←

2010.11.10 ろしあん蒼

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