小説〜主〜

□せめて今だけ。
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月が明るく照らす夜。
その月光が差している部屋で、二人は寝床を共にしていた。
と言っても、別に情事とか そんなものは全く無い。
ただ、ほんの数十分前まで話をしていて、幸村が疲れて寝入ってしまっただけなのだ。しばらく政宗によっかかっていたのだが、もう完全に夢の中。政宗はため息をついて、奥から布団を引っ張ってきた。そこに起こさないように幸村を寝かせ、隣に政宗が転がる。そしてしばらく、すやすやと眠り続ける幸村の寝顔をみていた。 普段も童顔(とても本人には言えないが。)なのだが、眠っているとそれが際だつ。
時々、穏やかな寝息が政宗の鼻をかすめていく。 そんな様子があまりにも愛しくて。政宗は幸村の頭をそっと撫でた。自分のものとは違う、柔らかな毛が指にからまる。政宗はくすり、と笑って、
「………やっぱりアンタは可愛い奴だ」
と小声でささやくように言った。 実際、起きているときに言えば、「破廉恥!」だのなんだの言われて相手にされないだろう。
だが、それでも言ってやりたい言葉はたくさんあるのだ。
好きだと、愛してると、何回でも、何度でも…。
言いたいけれど。
「そんなこと言うと、アンタは軽々しく言うな…とか怒るんだろうな」
苦笑いをして、また頭を撫でた。
「……普段がダメなら、せめてここで言わせてくれよ?

……愛してる。」

そう言って政宗は、幸村をより近くに抱き寄せて。
同じ夢がみれればいいと思いながら、目を閉じた。
 

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