鬼たちの宴

□2人の鬼
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「楓。少し出かけましょう」

この言葉から始まった

「はい、おかあさま」

少女は幼いながらもしっかりと言葉を紡いでいた

少女が住んでいるのは自然溢れる山奥。そこには家と言うには少し大きな屋敷があった

「どこへいくのですか?」

少女…楓は小さな首をかしげて母に質問した

母は小さく微笑みながら言葉を紡いだ

「私の知り合いの人の処よ。そう言えば貴女と同い年の男の子と鬼頭が居る筈…」

「おになのですか?」

少女の肩が大きく跳ねそして俯いた

母はええと言ってから少女に手を差し出した

「大丈夫よ。優しくていい子だから」

少女は震えるをそっと母の手に重ねて頷いた

それから暫くして家の傍に1台の車が止まった

母とその車の元へと行くとスーツを身に纏った男が深々と一礼してきた

「御久し振りでございます。梓様。楓様」

2人は男に促されるまま車に乗り込少しの時が流れた

暫くして車がゆっくりと止まった

「有難う」

母はそう言ってから車から降りた

少女も男にお辞儀をしてから母について降りた

少女の目の前に古風な観音開きの大きな扉と左右に広がる苔むした岩塀

少女は母の手をしっかりと握り2人で大きな門をくぐった

すると母に二人の男が近ずいてきた

「梓、久しぶりだな」

男がそう言うと母と男たちは話し始めた

少女は3人の様子を見上げていた

「…ところでその子は?」

すると少女の肩が大きく跳ねた

「私の子供よ…楓」

少女は母の手を震える手で掴みながら呟いた

「…はじめまして…楓…です」

母はそう言えば…と話を切り出した

「この子をあの子たちに会わせてもいいかしら?」

その一言で少女は母と奥の部屋に通された

「おかあさま…」

少女はおびえたような眼で母を見た

「大丈夫よ。あの子たちは優しい子たちだから貴方もすぐに仲良くなれるわ」

母はそう言うと1つの襖の前で止まった

「2人ともいるかしら」

そう言って母は躊躇せずに襖をあけて中へと入っていった

母に続いて少女もゆっくりと中へ入っていく

すると部屋の中には2人の鬼が居た

1人は黒髪の青年で1度楓達を見てから窓の外へと視線を移した

もう1人は、楓の方に近づいてきた

「だ〜れ?」

幼い鬼は中立的な顔立ちをしていた

楓は少し母のうしろへと隠れた

「あら、水羽くんね。大きくなったわね」

水羽と呼ばれた少年は少し首を傾げた

母はにっこりと笑い少年の頭を優しくなでた

「私はあなたのお父さんと鬼頭のお父さんの友達よ」

少年は母の言葉を聞いてから楓を見た

「きみは?」

楓は母に促されて口を開いた

「楓です…」

すると少年はにっこりと笑った

「ぼくは 早咲 水羽だよ。よろしくね楓ちゃん」

これが初めての鬼との接触

そしてゆっくりとゆっくりと

歯車は音を立てて回り始めた

その歯車は

悲劇を呼ぶのか喜劇を呼ぶのか

それは誰にもわからない
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