Short Story

□親不在の水族館
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サカマタが過労で倒れました――


【親不在の水族館】




どうやら伊佐奈の世話、ショーなどの管理でかなり疲れていたらしく、今朝の会議でぶっ倒れた。
誰かが殺そうやらランク下げだの言っていたが、伊佐奈が子供になっている今、サカマタが居ないと水族館の業務が滞る。
それに、皆は伊佐奈をサカマタに任せっきりだった。
だからどう世話をしたらいいのか分からない。

「どうすんだよ」

「私が知るわけないじゃん」

「今は午前7時…誰が館長起こしに行くんだ?」

ドーラクの言葉に皆は黙った。

「ドーラクが行けば?」

「嫌だね」

「では、ここで1番ランクが上のカイゾウ殿に!」

「ワシは嫌じゃ。サカマタが言っとったぞ。館長の寝起きはものすごく悪いとな」

そうなのだ。伊佐奈の寝起きはものすごく悪い。
無理矢理起こすと鯨の尾が襲い掛かるのだ。
だが、これを除けば理不尽な暴力を受けないため、以前より楽なのだ。


結局、皆は誰が起こしに行くかをあみだくじで決めることにした。

結果……

「い嫌だ…!絶対し死ぬ!」

デビルフィッシュになった。

「ギシシ。お前軟体動物だろ?簡単には死なねぇんじゃねぇの?」

「安心しろ、デビ!もし死んだら葬儀を執り行ってやるからな!」

「ならテメェがいけ!」

「断る!」

デビルフィッシュは幹部の皆に見送られ、館長室へ向かった。




こんこんとドアを叩く。

「しし失礼しまます…」

ソッと中を覗くとベッドの上に膨らみがあった。
伊佐奈はまだ寝ているらしい

「(じ自分で起ききれば…いいのにに…)」

その時、伊佐奈がモゾモゾと動いた。
ビクビクと見守る。
だが、何も起こらなかったので起こそうと行動にでた。

「……館長、お起きてくくださいい…」

ユサユサと優しく、本当に優しく揺さぶる。

「ん……サカマタ…?」

「い、いえ…サカマタじゃありりません。デビルフィッシュですす…」

伊佐奈はムクリと起き上がった。

「サカマタは?」

「体ち調がす優れないい…らしく、休んんでいます…」

起き上がっても、目は半開き。そして、うつらうつらとしている。

「か、館長……」

「うるさい…」


鯨の尾が襲い掛かる。
デビルフィッシュ、全治2週間。



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伊佐奈がマンタに乗って現れた。
そして、マンタは虫の息のデビルフィッシュを引きずっていた。
伊佐奈はまだ眠いのか、ぼーっとしている。

「デビ…ちゃんと葬儀は行ってやるからな!」

「ま、まだ…死んでなない…」

その時、伊佐奈が話かけてきた。やっと覚醒したらしい。

「ねーねー、サカマタは?」

サカマタは今、療養中だということを伝え、デビルフィッシュを医療室へ運び込んだ。

「何でデビボロボロだったの?」

お前のせいだ、とは言えず、階段で転げ落ちたことにした。



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―昼―


いつも通り、ショーの準備をしていると、1番やることの無いフカに伊佐奈が話しかけた。

「フカー、お腹空いたー」

「え?」

はて、館長はいつも何を食べてるんだったか…

「館長は何をいつも食べてるんですか?」

とりあえず本人に聞くことにした。
聞くと、ニコッと笑ってこう言った。

「サカマタが作ってくれるの」

「(え?サカマタが?あいつ料理出来んのか?つーか、火に当たるから火傷すんじゃね?)」

ちなみに何が1番好きか聞くと、

「好きなのは、小魚の煮付け!」

「(まさかの和食っ!)」

「サカマタはね、骨も取ってくれるんだ」

「(母親かっ!)」

結局、料理の出来ないフカはカップ麺を作った。
すると、伊佐奈はいたく気に入ったという…



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カップ麺を堪能した伊佐奈は水族館内を歩き回った。

いや、走り回った。

「館長、館内を走ってはいけません!」

直ぐさまイッカクに止められた。

「暇なの。遊んで、イッカク!」

小首を傾げる伊佐奈に不覚にもキュンときてしまったイッカク。
だが、今は仕事中なのを思い出し、遊んでやりたい気持ちを抑える。

「私は今、仕事中の身。遊ぶことはできません」

そう言うと、伊佐奈は少し不機嫌な顔をした。

「じゃあいいや。暇そうな人と遊ぶ」

「(館長に嫌われた…)」

泣きたくなる気持ちを抑えて仕事に戻った。
伊佐奈はいつのまにか走り去っていた。



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伊佐奈は関係者以外立入禁止区域に戻り、暇そうな人を探した。
ふと目に入った高身長な人影。

「あれ?ドーラク何してるの?」

「んぁ?館長か……どうしました?」

イスに座ってぼーっとしていたドーラク。
どうやったら自分のランクが上がるか考えていたらしい。

「(館長の世話すりゃあ、俺のランクも上がるか…?)」

今の館長にこの思惑が通用するのか、そこが問題だ。

「暇な人探してたの。ドーラクは暇?」

チラリと時計を見る。
今は午後1時。ショーが始まるのは、午後3時。
照明の点検は午後2時20分に行う予定なので、1時間ほど時間に余裕がある。

「まぁ、2時までやることは無いですね」

この時間はもっぱらランク上げの策を練ったり、魚の掃除指導などをしていたのだ。

「じゃあ遊ぼ!」

「何をするんですか?」

「えっとねぇ…かくれんぼ!」


そして約1時間、隠れるのが上手い館長をへとへとになりながらドーラクは探す羽目になった。

「ドーラク遅い。サカマタは直ぐに見つけれたよ!」

「(俺のランク、これ以上上げんの無理じゃね?)」

サカマタの能力に負けを覚えたドーラクだった。



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そして、皆ショーやら警備やらで忙しくなってきた。
伊佐奈はつまんない、と呟いて今は立入禁止の地下に行った。

そこには大きな水槽があり、一匹のシャチがゆっくりと泳いでいた。
シャチ…もといサカマタは伊佐奈に気づいたらしく、口で水槽のガラスを叩いた。

「サカマタ、体治った?」

水槽に手を当てながら話しかけた。
その手にガラス越しに口を寄せるサカマタ。
伊佐奈は隣にあったドアの開け、階段を上り、水槽に飛び込んだ。
サカマタが近くに寄るのを見て、魔力をかける。
サカマタはいつもの人の形になった。

「心配かけてすみませんでした」

「もう大丈夫?」

「はい」

よかった、と伊佐奈は笑って抱き着いた。
そして、今日は動き回って疲れたのかそのまま寝てしまった。

サカマタは底に座り、伊佐奈を自分の膝に乗せた。
そして、伊佐奈が目覚めるまでそのまま過ごしたのだった。



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*オマケ*

「そういえば、お昼は何を食べたんですか?」

「フカがね、かっぷめんっていうの作ってくれたの!」

「(栄養バランスが偏るじゃないか!フカめ、後ででらシバく!)」



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長くなっちゃいました。
サカマタさんは水族館の親的存在だと思う…


春夏様リクエストありがとうございました!
春夏様のみお持ち帰りOKです!


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