FF7 novel link series

□ビハインド 2 bonustrackU
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涙で封された瞼を無理繰り開けると
ブラインドの細い隙間から見える朝焼け

ああ、あの人が居なくなってからもう一日が経ったなんて
嘘の様

もう一日こうしていようかとシーツを引き寄せ包まるが
ふと頭を掠める書き掛けの設計図
指示が仰げず困っている部下たち
「仕事に行かなきゃ」
そんな理由であの人が居ない空虚をやり過ごそうとする私は薄情



のろのろとベッドから起き上がり
シーツを剥がし
洗濯機へ放り込み自分もシャワーで身を清める

身体に残されたあの人に愛された残滓が
湯水に溶け
渦を巻き
排水溝に流れていく
消えてなくなっていく

あの人に愛された私ではない
ただの私に、なっていく


湯上がり
ふとサイドボードに残された
落ち着いた若草色の薄い缶に目が付いた

表装には金のエンボス
グラスランド・ヘンミ
あの人が吸っていた細巻き
真似て少し湿気ったそれに火を付ける

一息
二息
苦いばかりで
あの人の様に美味いなんて思えない

服に染み付く細巻きの薫り
でもあの人の匂いとか何処か違って
飲みかけの水のグラスに細巻きを捨てた
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