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□それでも、
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「今日、家にあがってもいいか?」


それが始めの言葉だった。
黙ってる僕に太一さんは言葉を続ける。


「今日は朝から親がいないんだろ?」

「……なんで…」

「だって昨日言ってたじゃないか」


確かに、昨日電話した時にそんなことを話した。
僕が今日1人なのを知ってるコトに関しては疑問はない。

そうじゃなくて…


「どうしてそれをウチに来てから言うんですか」



玄関の扉を開けて太一さんの姿を見てから固まってしまっている僕の質問に、
太一さんは笑顔のまま答えた。

「いやぁ、光子郎なら家にいると思ったし!」


…答えになってません。
もう、太一さんってば……

僕はドアノブに手をかけたまま
はぁ、と小さなため息をついた。


「太一さんの行動力には感服しますよ…」

「それどういう意味だよ…。
 ま、いいや。おじゃましまーす!!」

「あ、ちょっと太一さん!!」


扉の前にいる僕を押しのけて家に入ってきた太一さん。
クツを脱いで真っ先に僕の部屋に入っていった。
急いで僕も後を追う。


「もう、勝手に入らないでくださいよ」

「いーじゃねーかよ〜。
 ホントは俺が来て嬉しかったんじゃねーのー?」


その言葉で急に顔が赤くなる。
僕の顔を見て太一さんは嬉しそうな顔になった。


もちろん嬉しいですよ。


その一言をいいたいけど、
恥ずかしさが邪魔をして……

「〜〜…! もういいです!!」

なんて言ってしまう。


そういって布団に隠れる僕に太一さんは謝るから出てこいよ、というけれど
こんな真っ赤になった顔を見せるのは恥ずかしくて嫌です、と返事をする。


「突然家にきてそういう風に言うなんて
 太一さんなんて大嫌いです!!」

「だから悪かったって〜…」


こんなこといって太一さんを困らせてしまうけど…





それでも……


大好きなんです。


-fin-
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