NL

□寝顔。
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プルルルルルル。

着信。

空也からだ。



「こんにちは」

「こんにちは、何の用?」

「本日、エルドラドに来ていただけませんか?」

「はぁ?」

「いや…高原さんに会いたいなぁと思いまして。」

「そういう客引きはズルいんじゃない?」

「客引きなんかじゃ。」

「まさかエルドラドさまの売上が落ちたとか?」

「率直に、俺が会いたいだけです!お忙しいなら結構ですよ」



そのときだった

電話ごしに彼の咳こむ声が聞こえたのは。



「まさか、アンタ風邪ひいてんの?」

「いや、、元気です。むせただけですよ、」

「もう…しょうがないわね、行ってあげる。そのかわり私が客の時はしっかり気を抜くことね」

「…はい、」


辛いなら辛いって
正直にいえばいいのに。

まぁそれが、NO1ってものよね。

うちのジョン太とは大違いだわ…






階段を下りる途中

空也の写真が壁の所々に貼ってある。

彼の肩に乗っている荷物は
決して軽いものではないだろう


「いらっしゃいませ、いらしてくださってありがとうございます」

「はいはい、」



どうにかバレないように
息をこらして咳をしている


「ちょっと、、」


額に手をあてようとした時
すごい勢いで私の手を止める。



「ちょ、」

「すみません、大丈夫ですから。」

「…」



ふかふかのソファで
たわいのない話をするけれど

空也はボーッとしていた。



「ねぇやっぱり、あんた熱あるんじゃ…」

「大丈夫ですから!」



空也は酒の入ったグラスを手に取り、一気に飲もうとする



パシッ



「…、高原さん…?」

彼の頬を平手打ちしてしまった



「あんたね、そんなんで接客されたって全く意味ないから!!大体お客様に移したりしたらどうするわけ!?無理矢理大丈夫だって思い込んで力ずくで仕事してるんじゃ、NO1もなにも無いわよ!!」



つい熱くなってしまったというか、、、大声を出しすぎた。

急に恥ずかしくなる。



「…帰る」



すると空也は立ち上がり、店を出ようとする私の手を掴み、
待っててください、
と言った



よくわからず外で待っていると、コートを着てマスクを付けた空也が出てきた。



「家、どこよ」

「すぐ近くです」

「…ほら、行こ」

「…送って頂くなんて、結構ですよ、みっともない」

「んなの今更よ、早く帰ろう」



私はつかつかと先を歩く



なんだろう、
今日はさすがに空也が弱気だ



「高原さん」

「何」

「手…繋いでいただけませんか」



差し出された手は
私より少し大きくてたくましかった



「…仕方ない」

「ありがとうございます」



うれしそうに笑う彼の手は
かなり熱を帯びていた。
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