イノセント・エイジ

□4.過ち罪に濡れて
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「ただいま……」

罪悪感を少し抱えて家に帰ると、雅人だけだった。

「あれ? お母さんは?」

留守番をしていた雅人に麻里は母の行方を聞いた。

「う…ん」

何か歯切れが悪く、雅人は俯く。

「どうしたの? 雅人くん」
「あの……」

言いよどんでいる雅人に目線を合わせて麻里は言い出すのを待った。

「お母さん……病院……」
「病院?」

定期検査は先日行ったばかりではなかったろうか?

「救急車呼んだの……お母さん、お腹が痛いって言って――足から血が出てた……」
「足から血って! 何があったの!?」

雅人の話だけでは要領を得ない。
だが救急車を呼ぶほどだ。
何か尋常でないことが起きたのだ。

身ごもっている母に、すぐに思いつくのは流産。

「お父さんは? 仕事?」

もしこのことを知らず、父が出かけたのだとしたら連絡を取らねばならない。

しかし雅人は首を振った。

「――一緒に救急車で行った」

それを聞いて麻里はほっとする。

父が家にいるうちに起きたことなのだ。
母の容態は気になるが、まずは一安心だと思った。

「ね、お母さんに何があったの?」
「朝、お母さんと…お父…さん……ケンカしてて……」

しかし雅人の言葉に驚愕させられる。

「ケンカ!?」
「う…ん。何かスゴク言い合ってた」

あの父が母と言い争うなど考えられない。

きっと何かの行き違いがあったのだ。

だが……いや、もしかして母は父のことに気づいていた?

「――で、どうなったの?」

震えそうになる声音を抑えて聞いた。

「ぼく…知らない。お父さん、仕事で出かけるって言ったんだけど、お母さんは、仕事じゃないんでしょ、って……声は聞こえ…てたけど、ケンカするの…見てないから……」

俯いて話す少年は父母が言い争うのを物陰で震えていたのかもしれない。

「おねえちゃん!」

突然、雅人が抱きついてきた。

「どうしたの」

麻里は驚き少年の身体を抱きとめる。

「お父さん…お母さんをイジメないよね? おねえちゃんのお父さん、優しいんだもんね。前のお父さんと違うよね?」

「雅、人…くん……?」

雅人の前の父は何をしたのだ?
 
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