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□僕がきみの肺に吸いこまれたらふれてとけてしんでやがて呼吸になる、そうしたら僕がきみの命だ
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しかしながら俺は俗に言うリストカッターだ。

死にたい訳じゃない。
俺も悩める少年少女の様に"いきたい"から切る。



毎日の様に切る訳じゃない。ふと思い出して、切る。
薄くなった傷を見て、人間の自然治癒力は意外と凄いと知った。










でも"いきたい"俺を、どうしても殺したい存在が居るという。









彼は化け物と呼ばれた。
しかし人間になりたがっていた。なりたかった。
彼の、割と細い腕は人を求めるにはあまりにも異常だった。

人を愛したくて、
人に愛されたくて、
彼はそれでも化け物だった。











ねぇシズちゃん














俺が死んだら苦しいかな

















ざぁざぁ


ざぁざぁ


ざぁざぁ







血が、足りないんだ。そうだ、俺は。
湯船に溜まっていた水は、紅く変色していた。

俺はシズちゃんの為に、死を選んでやったんだ。
"いきたい"俺を、
殺したいんだろう?






ねぇシズちゃん










「…莫迦、か。手前は」




ざぁざぁ


ざぁざぁ


ざぁ、………



大きな手が俺のそれを包んだ。
思ったより身体は冷えていたらしい、その手は温かい。
彼は元々子供体温だけど。

「人の家で、死のうとすんなよ…。」

声は彼にしては珍しく沈んでいた。こんな声を聞くのは何時ぶり何だろう。


「…死ぬなよ、俺に殺される以外に手前に死に方があると思うな。」


変な■■ちゃん、俺が死んだら万々歳じゃないか。


「臨、也…」

彼はその服が濡れるのも構わず、俺を抱き締めた。

いいの?大事な■君がくれた服だよ?

「居なくなるなよ」





























……もし俺が死んだら首だけ保存して欲しいな。
残りは食べて欲しいかな…
若しくは荼毘に付して、骨を砕いて吸い込んで。


俺を君の命にして、君と一緒にいきさせて。


俺の首を見て、一生忘れないで


忘れられるのは怖いから。

僕がきみの肺に吸いこまれたら
ふれてとけてしんで
やがて呼吸になる、
そうしたら僕がきみの命だ




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