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□利口なおまえのことだから
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臨也を殺そうと決めたのは何時だったか。
来神時代からか?
いや違う。

折原臨也という存在が生まれたから、
俺という化け物が生まれた。





平和島静雄という存在は
折原臨也を殺す為に生まれてきた。














「愛してる
愛してる
すき、だいすき




…なんて、廃れた表現だろうか。俺はね、正直に言うとこの気持ちを言葉で表現するのは不可能だと思っているんだ。だってそうだろう?愛してると囁く非処女は子宮に出される精子を愛してるのかもしれない。だいすきだと言う非童貞は己の性器に絡み付く肉壁がすきなのかもしれない。言葉は人間が手に入れた最大の財産で、同時に最悪の汚点でもある。」
臨也は言葉を中断させる。

真っ暗闇の中でまた更に殺気が増したからだ。
「……やだなぁシズちゃん。怒った?怖いなぁ恐ろしいなぁ。本当に君は面白くて、思い通りにならなくて、心底厄介な化け物だね。」
「ああぁああぁ、手前よぉ。その五月蝿ぇ雑音なんとかなんねぇのかよ?」

ガツンッ

「ぐっ、ア゛」
その音は、臨也の折れた足を踏みつけた音。
まるで芋虫の様に転がる臨也を恐ろしく冷めた眼で静雄は見下ろしている。

「やめ、てよシズちゃん。俺は君の様な化け物じゃないんだよ、骨だって折れるしナイフだって刺さるし。」
「あ?そうか。じゃあ刺してやろうか?」
静雄の声色に臨也は思わず身震いをする。
(確実に刺す!今のシズちゃんなら…!)



刹那、右腹部に燃えるような感覚を感じた。

「−−−−−!!!!」
悲鳴にすらならない声が臨也の口から零れ落ちる。その後に、静雄の笑い声が続く。
歓喜の笑いか、或いは。

「ひ、はっ、あぁう…」
「はっ、悲鳴を上げる事も出来ねぇとはなぁ。くくっ、あはははははっ」

グリッ

静雄がナイフで腹を抉ると臨也の身体は面白いほどに跳ね上がった。その反応が気に入ったのか、静雄は何度もナイフを動かした。
そのたびに臨也はくぐもった悲鳴を上げながら陸にあげられた魚の様に跳ねる。

「シズ、ちゃん…、
……、…」
反応の鈍くなった臨也に、流石の静雄もその行為をやめた。
「あー…死んだら駄目だろ、いーざーやくーん?
俺はよぉ、手前を殺す為に生まれてきたんだよ。ナイフに殺させるなんざ、させねぇ。まぁ、なんだ。これは一種の拷問て奴だ。」
シズちゃんにしては饒舌だな、と白んできた頭で臨也は思った。









さて、俺はどうしてこんな事になっているのだろうか。
臨也は思考する。



それは約3時間程前に遡る。
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