種運命小説:シンキラ以外はこちら

□empty tears  06.3.23
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 今、一人ぼっちだ。
 先の大戦で、父のように大切な人と、母のように温かく自分を抱きしめてくれた人を失った。自分も共に死ぬはずだった。なのに、なぜか生きている。
 どうして、自分だけ生き残ったのだろう? 自分にはほとんど未来なんてないのに。
 レイは華やかなネオンの煌めく繁華街を歩きながら、いつものようにぼんやりと考えていた。
 でも、答えなど出るはずもなく、レイは考えるのを止め、辺りを見回した。自分を買ってくれる客はいないだろうか。
 しかし、雨が降ってきた通りに人は誰もいなかった。
 レイはシャッターの閉まった店の前に座り込む。身体が雨で濡れ、冷え切っても、動かなかった。
 このまま、眠って、死ねたらいい。そしたら、楽なのに。
 その時、身体を電波が駆け抜けたような奇妙な感じを覚えた。
「何だ?」
 レイは顔を上げた。その瞬間、雲一つない透き通った空を思い出させるスカイブルーの瞳と目が合った。金髪の髪をした男の顔立ちが何となく、ラウに少し似ているようにレイには感じた。
 男の方もレイに何かを重ねるようにじっと見つめている。
「まさか……いや、違う……」
 小さく呟いた男はレイに向かって歩いて来た。
「雨の中、座り込んでいたら風邪を引くぞ」
「構わない」
「家はどこだ? 送ってやるから、立て」
「そんなものない。放っておいてくれ」
「そうは言ってもな、夜、子供をこんなところに放っておくわけにはいかんだろう」
 男は困ったように頭を掻いた。
「なら、今晩、俺を買ってくれ」
 レイは真っ直ぐと相手を見つめた。自分から客にこんなことを言うのは初めてだった。いつもは客の方からレイを口説いてくる。そうして、レイは金額を指定するのだ。
 けれど、レイはラウにどこか似た男に何となく、興味を持ったのだ。
「おいで」
 男は座り込んでいるレイに手を伸ばす。レイはその手を掴んで、立ち上がった。
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