Story

□夕焼けラブソング
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いつも彼女は、笑っていた。
優しく、だけど少し苦しそうに。
そしていつものように、言うのだ。
『また明日』と。




夕焼けラブソング





当たり前のようにあった、存在。
笑いあって、辛いときもお互い、支え合って。
柔らかい彼女の黒髪に、手を伸ばせば、犬のように顔を綻ばせる。
そして彼女もまた、僕と同じようにわしゃわしゃと、痛みきった僕の髪を撫でるのだ。
それが僕にはなんとなく、心地がよかった。


『おはよう』『サヨナラ』『ふざけるな』『ごめん』そんなただの言葉でさえ、彼女とだから、愛おしいななんて気持ち悪い事も、そういえば考えていたなぁ。
すっかりと、秋の色も濃くなり紅葉の葉が赤くなりはじめている。

ひらひらと、それは地面へと落ちていき、赤い絨毯を作る。その上を歩くと、クシャリと葉が潰れる音がした。
その音を耳にしながら、彼は目的地まで足を進める。
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