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□笑顔《紅蓮×昌浩》
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なぁ、昌浩、お前の傍にいていいのか…。
荒れ狂う炎で、お前を死の淵に追い落としかけたのに―…。
‐笑顔‐
傷ついた体の、その痛みで、昌浩はふと目を開いた。何気なしに横に視線をやれば、うつむいた物の怪の姿。
「もっくん…」
その姿があまりに痛々しくて、思わず手を伸ばした。ぽんっと物の怪の頭に手をのせる。
手に触れる、暖かな感触。いつもと同じ動作なのに、それだけで体が悲鳴をあげた。
いつもなら、そのままわしゃわしゃとそのやわらかな毛を撫で回すのだが、どうやら今は無理らしい。
昌浩は、ただ静かに物の怪をみつめた。
「昌浩…」
のろのろと物の怪が頭を上げる。
物の怪の瞳には、疲労した、けれども笑顔を浮かべる昌浩の姿がうつる。
「もっくんのせいなんかじゃないよ」
目があった瞬間、昌浩の口を飛び出した言葉。
優しい瞳が、物の怪をみつめる。
物の怪は返事を返せない。