short novel

□桜《紅×昌》
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ある春の日でした。


昌浩と物の怪姿の紅蓮が陰陽寮を退出し、安倍邸へと歩いていると、

ひらひら

「え…?」

突然、昌浩の前に何か降ってきました。


「ん〜?」


昌浩の肩に乗っている物の怪姿の紅蓮が器用にそれをつかみました。


「桜だな」

「桜…?」

「あぁ、たぶん近くに桜の木があるんだろう」

そうです。昌浩の前に降ってきたのは桜の花びらでした。


「ほれ」

紅蓮から花びらを渡されで昌浩はまじまじとその花びらをみました。

「きれいだね」

「だな」

素直な感想を述べると、紅蓮もそれに頷きました。


「この近くにあるなら、みたいな、桜…」


昌浩の口から静かにそんな言葉がこぼれました。


すると、


「昌浩」

「え…?」

突然、物の怪姿の紅蓮が本性に戻り、昌浩の体を抱き上げました。まぁ、いわゆる、お姫さま抱っこです。

「行くぞ」

「えっ!?ちょっ!!紅蓮!!」


紅蓮はそういい駆け出しますが、昌浩は大慌て…。恥ずかしくて仕方ありません。ですが、

「ん〜?どうした?」

紅蓮はいたってマイペース。問い掛けながらもどんどん先に進みます。

「おっ…降ろして!!」

昌浩は必死に紅蓮に言いますが…

「もう少しだから我慢しろ」


紅蓮は取り合ってくれません。

しばらくして、

「ほら着いた」

紅蓮は止まり、ゆっくり昌浩を地面に降ろしました。

「わぁ!!きれい…」

大きな桜の木が、美しい桜花をたくさん咲かせ、そして、静かに散らせている。
その様子に昌浩は息をするのも忘れて見入ってしまいました。

そんな昌浩の様子を紅蓮は優しく、そして愛しそうにみつめていました。

「紅蓮」

突然昌浩が紅蓮を振り返りました。

「ありがとう」

昌浩は満面の笑みでいいました。

「あぁ」

紅蓮も嬉しそうに笑い返しました。


そんな2人を、桜の花が静かに見守っていました。



ーENDー

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