short novel
□昌浩の悩み事
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「ねぇ、勾陣」
ある日、昌浩が勾陣に言った。もっくんこと紅蓮は祖父晴明に呼ばれており、いなかった。
「あ、あのさ。もし、どうしようもなく好きな人がいて、で、もし思いが通じたからって、き、き、キ……ス……をしたいとか思っちゃったら、変なのかな?」
その言葉に勾陣は目を丸くしてまじまじと昌浩をみた。
勾陣に背を向けているが、首が紅いのがわかる。たぶん顔も真っ紅だろう。
その様子はとてもほほえましかった。だから少し考えてから言った。
「別におかしくはないと思うぞ。それは普通だろう。なんだ、昌浩、まだあれとはキスしてなかったのか」
紅い首がもっと紅くなった。
「う、うん。もっくんが求めてくることはなかったし、俺は俺で、考え…つかなかったから」
もごもごと口籠もりつつ昌浩は言った。その様子をみた勾陣はさらに笑みを深くして言った。
「そうか。キスをしたいならしてやるといい。きっと喜ぶ」
「そっか、ありがとう。勾陣」
昌浩は少し紅がひいた。しかしまだ紅い顔で、しかし今度はちゃんと勾陣をみて言った。
「いや、かまわないさ。あれが晴明のところから帰ってきたらしてやるといい。邪魔者は消えよう。」
勾陣はそう言って隠形した。気配も遠ざかる。