Dream
□夏の林檎
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サアッ
冷たい風がわたしの髪をなびかせる。
わたしは、ひとり、暗い屋敷の裏を歩く。別に目的などない。ただ、歩きたくなっただけ。
ふと顔をあげる。
その先には林檎の木があった。
…新しい発見。
まだ熟していない林檎を見て苦笑する。―わたしに似ていて情けない。
―もうすぐ秋が訪れる。
◇
「ヴィンス?」
…ここにもいないか。
何処行っちゃったんだろう?
「あ、ギルバード」
廊下を歩いていたギルバードに声をかける。ギルなら彼の居場所を知っているかも…。
「ヴィンセント、何処にいるか知らない?」
「ああ、外で見かけたぞ」
「本当?!ありがと、ギル!」
「あ、ちょ待て!」
一刻も早く彼に会いたかったわたしは駈け出した。