novel
□モノクロ妖かし奇談
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雲一つ無い晴天。
「ごめんね、手伝わせちゃって」
「気にすんなって!ところでこれも出すのか?」
毎年一度だけする掃除を拓海(タクミ)と一緒にやる。
随分昔に寺をやっていたせいか、一般人には分からない代物ばかりが置いてあって、それを蒸し干しするのが決まりになっていた。
「…?…何だこれ?」
薄暗いこの小さな倉庫で
初めて見付けた一冊の本―――。「どうしたの?」
「…いや、前はこんなの無かった様な気が……ちょっと見てみるか」
「…あ!颯人(ハヤト)待って…!」
「え?」
拓海の制止と同時に破ける音がした。黄ばんで古びた本は無傷で、だけど一枚だけがヒラヒラと足元に落ちて行く。