リク小説置場
□月夜に ・・・・「白昼夢」番外編 フィンより
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翌朝、恐る恐る僕がかあ様の部屋を訪ねると、母は窓際に立ちすくんでいた。
いつもの様に外をじっと見ながら。
「かあ様・・・・」
自分の声が母に届かないのはわかっていたが、僕は呟いた。
すると、母が珍しく僕を見つめてきた。
「かあ様!」
僕はうれしそうに声を弾ませて母の足にしがみついた。
母は僕をじっと見詰め、そして僕の頭を撫でて、ぼくの視線に高さをあわせるようにしゃがんでくれた。
「かあ様!」
僕は喜んで母に笑顔を向けた。
母は無表情のまま、僕の頭を撫で続け、そしてその手が徐々に下がってきた。
そして、いきなり両手で僕の首を絞めた。
「か・・・・さ・・・ま?」
声が出なかった。
驚きで、母の顔から目を放せず、じっと母の目を見てしまう。
母は無表情のまま、僕の首を絞め続けた。
母のやわらかい手は、鉄のように硬く僕の首を締め付けてきた。
涙と涎があふれ出した。
「・・・や・・・・め・・・」
懇願の言葉が出ない。
母の表情は変わることなく、そして目は空ろで何も映っていないようだった。
意識が遠ざかるのが分かった。
「奥様!奥様!止めてください!!」
意識が遠のく中、召使の叫び声が聞こえた。
母の空ろな目が、僕の視界から消えていく。
僕の存在を消し去るように。
そうだ・・・・
母の中で、僕はもう存在しないものだったのだろう・・・・。
僕は混濁する意識の中、それだけを考えていた。