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□いじめ10
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次に目が覚めたとき、僕は病室にいた。
転校してからまだ1年もたっていないって言うのに、僕は何回気を失っているんだろう。
少し可笑しくなって笑った。
体を動かそうとすると、全身に痛みが走った。
腕や足が折れていたのか、固定され天井から吊り下げられていた。

ああ・・・そっか・・・・

自分が受けた暴行を思いだした。

ガチャ
ドアが開き、佐藤が入ってきた。
「あ・・もう目覚めたんだな。」
佐藤はそういって僕のベットの上に腰掛けた。
「で、犯られた?」
何の前触れもなく、直球で聞いてくる佐藤に僕は思わず吹き出した。
「あははははは! 普通そういう事直球で聞く?もう少し聞きづらそうに聞けよ! 散々犯られまくったっての!」
僕が笑ったのを見て、佐藤もケラケラ笑った。
「マジかよ?そりゃ、最低だったな!」
重苦しさなんて微塵も感じる事なく、二人してゲラゲラ笑った。
「も、本当に最低。ボコボコに殴られて、何人にも犯されてさ! でもオレ最後まで舐めなかったよ。」
「あははははは、何それ。真似っこじゃん!」
佐藤が再度爆笑した。
そして僕を抱き寄せて、いつもの様に頭を撫でてくれる。
佐藤が僕の耳元で急にまじめな声で囁いた。
「多分、お前が犯された事、親にバレてる。」
僕の体が硬直した。
佐藤は僕を抱き締めたまま話を続ける。
「オレが犯された時も、結局病院に運ばれた。医者が治療の為に尻の穴見たんだろ?そしたら精子が大量に出てきた。そりゃ一目で分かるって。で、医者が勝手に親に話してた。」
僕は言葉が出なかった。
「悲惨だったよ。親も聞きづらいんだろうな。オレには直接聞いてこないんだ。ただ、どう言えばいいのか分からないって感じでさ。何も知らない、なかった事にしようと言わんばかりのギコチナイ雰囲気が家の中いっぱいでさ。母親もオレも、もう耐えられなくなってた。だから家を出たんだよ。」
僕は何も言えない。
佐藤は僕を抱き締めたまま、ずっと頭を撫でていた。
「お前も辛かったらオレの家に来てもいいんだよ。お前がどんな目に合おうとも、オレもオレ達のツレも変わらずお前の側にいるって。」
僕は泣いた。
そう言ってくれた佐藤の変わらない優しさが嬉しかったのか、それとも親に知られた事を嘆いたのか、散々犯された事に泣いたのか自分でも分からない。
ワンワン声を上げて泣いた。
ずっと佐藤は僕を強く抱きしめていてくれた。
泣きつかれて僕が静かになるまで。
そしてようやく僕は口を開いた。
「大丈夫・・・。僕は大丈夫だよ。」
それを聞いて佐藤は僕の顔を見た。
泣きはらした目をしているけれど、僕はしっかりとしていた。
「そっか、お前強いよ。偉いよ。」
僕の目を見て佐藤が言った。
「でも、本当に辛くなったらいつでも来いよ。強く頑張っていても心が悲鳴を上げたら、必ずオレの所に来い。
弱音を吐くのは弱いからじゃないから。強くなるために、泣くんだから。」
僕は再度静かに涙を流した。

佐藤がいてくれて良かった。
今後どんな事があろうと、佐藤はいつもと変わらない笑顔で僕の隣にいてくれるだろう。
僕が弱くても、強くても、そしてどんなに他人から汚されたとしても、飄々と僕の側にいてくれるだろうから。
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