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□白昼夢9
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次にレイモンドが目を覚ましたとき、先程のまどろみの表情とはうって変わっていた。
ユージンの手を優しくどけると、いつもの優しい笑顔を浮かべた。
「今後のことは考えた?」
レイモンドはそう言いながらベッドから降りると身支度を始めた。
レイモンドが身支度を終えるのを待ってユージンは答えた。
「もし、もしお許し頂けるのなら、レイモンド様の仕事のお手伝いをさせてください。
もちろん、今までの様にレイモンド様に満足して頂けるように奉仕もさせて頂きます!ただ、それ以外の空いている時間は、お仕事のお手伝いをさせて頂きたいんです!今のままではお役に立つことは殆どないのは分かっています!でも、少しでもお役に立てるように頑張りますから!!」
レイモンドは驚いたのか目を見開いてユージンを見た。
暫くの沈黙がユージンは怖かった。
こんなことを言って、レイモンドが腹を立てたのではないかと、自分に愛想をつかしてしまうのではないかと、じっと回答を待った。
「・・・・何故?・・・・。今のお前は私のお気に入りだ。ただ私と寝ていれば好きなものを買ってあげるし、好きなことをしていてもいい。なのに何故働きたいと思うんだ?」
「レイモンド様はおっしゃいました。今財産があったとしたらどうする?と。財産が底をつくことに怯えながら豪遊するよりも、財産を使って財産を増やして、それを使って豪遊すると。
今の私にとって財産は自分自身の体とレイモンド様の愛情しかありません。愛情はいつの日か冷める。そして私の体も成長を続ける。自分の成長への恐れ、レイモンド様に飽きられることへの恐怖を持ちながら日々豪華な生活をするより、今ある環境で出来る最大限の努力をして、自分の財産を増やすには知識を付けていくしかないと考えました。知識をつけ、レイモンド様の仕事に役立つようになれば、愛情は薄れても手放せなくなる。そして万が一捨てられても自分で仕事をする力がつくと考えたからです。」
ユージンの目に迷いはなかった。
「そうもハッキリ私がお前に飽きると断言するとはな。」
くすくすとレイモンドが笑った。
「短い間見てきましたけど、その可能性は高いと思いますが。」
ユージンが笑った。
「これは言ってくれる!気持ちが良い位ハッキリとモノを言う子だね。しかも思ったとおり賢い子だ。私がお前のどこを気に入ったと思う?」
ユージンは考え込んだ。
何の財産ももたず、外見もフィンやレイに比べれば落ちてしまう。
考え込むユージンを見てレイモンドが笑いながら言った。
「お前の生きることへの執着と、その賢さだよ。」
字もかけないユージンは自分が賢いと思ったことは一度もなかった。
「私は字も書けないようなバカですが?」
ユージンの言葉にレイモンドが笑う。
「字の読み書きなど、ただ知識があるかどうかだ。人間の賢さは記憶力だけではない。今ある知識の中でどうやって生きていくのが賢いのかを考えれる人間だけが賢い人間というものなんだよ。そして何かを得る為には何かを捨てなくてはいけない。それを恐れない強さを持っている人間が賢い人間なんだ。お前は生きていくために体を売るという犠牲を払った。そしてその犠牲からさらに快適な生活を送る為に、豪華な生活よりも労働すること・知識を習得する事を選んだ。私はそれを選んだお前を賢いと思うのだよ。
だからユージン。私はお前に対して今までの態度を変えるつもりはない。日中私の仕事を手伝ったからといって奉仕の強要を緩める気はない。今夜お前を手ひどく抱いても翌日休みを取ることを認めず仕事をさせるよ。」
ユージンは唾を飲んだ。
もし1ヶ月前の夜の様な扱いをされた後、翌朝に仕事ができるのだろうか?
不安がユージンを襲った。
でも、やるしかないのだ。
今の状況を変えるには、苦しみを乗り越えるしか方法はない。
ゆっくり長く自分の首を絞めるのならば、今苦しみを乗り越えて将来の自由を求めるべきだろう。
「もちろん、それは承知してます。どんな扱いを受けようとも必ず応えて見せます。」
ゆるぎない目でレイモンドを見つめた。
「じゃあ、今晩また同じ部屋のみんなと一緒に私の部屋に来なさい。」
レイモンドの言葉にユージンの体が凍った。
まさか、また・・・・。
先程言った自分のセリフを少し後悔したが、すぐに気を取り戻した。
どうせどの道を選んでも必ず後悔するだろう。
だったら未来ある道を選んで後悔する方がいい。
レイモンドを見つめたままユージンは答えた。
「はい。5人でお伺いします。」
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