story (R18)

□自覚
1ページ/3ページ

 奴良組若頭が訪ねて来た時は自分が世話をするから、緊急時以外は放っておいてくれ。
 薬鴆堂の部下には、鴆からそう言い付けてある。

「鴆…そんなにサカってんなよ」
「お前ェに盛らねぇでいられっかよ」
 鴆の自室は仕事場から離れているから、誰にも気兼ねすることはない。夜の姿で訪れたリクオと酒を酌み交わし、手を伸ばせば、もっと触れたくなって。
「嫌なら抵抗してみな」
「…抵抗する理由が見当たらねぇな」
 薄く笑ったリクオに見とれて、鴆は欲情を募らせた。畳に組み敷いてくちづけ、頬や耳、首筋にも唇を滑らせる。着物をはだけさせ、胸に舌を這わせ、朱い痕が浮くほど吸い付く。
「あ…、ん、っん」
 はやる気持ちを抑えて体に触れていけば、リクオも次第に声を色付かせて誘う。戯れるほど欲しくなるのはお互い様。
「硬いな」
「…この野郎、いちいち言うな」
 着流しの上からリクオの股間を撫で上げて、鴆が悪戯っぽく笑う。負けじとリクオも手を伸ばした。
「てめぇも…ずいぶん硬いじゃねえか」
「お陰さんでな」
 くく、と小さく笑い合う。鴆の手がリクオの裾から侵入し、器用に下帯を取り去る。直に触れれば、どくり、と脈打った。
「ん……、はぁ」
 かわいらしい吐息に気を良くし、ゆるく扱いてやる。快感に瞼を閉じた主が艶っぽくてたまらない。口に含んでやればもっと可愛い声を上げるに違いない−−そう鴆が唇を舐めた時だった。

「−−鴆様!失礼します、急患です!」

 障子の向こうよりも遠くから、足音と共に鴆の部下の緊迫した声が響いた。リクオは目を開けて鴆を見上げた。一瞬で険しい顔付きになった鴆が声を張り上げる。
「容態は!?」
「三匹が重体です。毒にやられているようです」
「今行く」
 間髪入れず返事をしてから、鴆は声をひそめてリクオの耳元で囁いた。
「すまねぇ。行くわ」
「ああ、早く行ってやれ」
「悪ィな、こんな状態……」
「馬鹿、いんだよ。行けよ」
 鴆は立ち上がると手早く着物を直し、リクオに背を向けた。羽織を置いたままなのに気付いたリクオが、起き上がって声をかける。
「おい、羽織は?」
「お前ェ持っててくれ」
 そう言い残し、鴆は足早に部屋を後にした。すぐに足音が遠ざかる。
 リクオは息をつくと鴆の羽織を無意識に抱き込み、着流しをはだけたまま畳にごろりと転がった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ