story (R18)

□催眠
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 夜更けの薬鴆堂に、長い銀髪をなびかせてリクオが降り立つ。
 鴆にはあらかじめ来る事を伝えておいた。だから部屋に鴆が居なかろうと、リクオは上がり込んで遠慮なく寛いでいた。ふと鴆の文机を見れば、粉薬の包みがひとつ。
「…いつもの、か?」
 昼の姿のリクオは二日酔いをすると聞いた鴆が、いつも用意してくれる漢方薬だろうか。悪酔いを防ぎ、酒の分解を助けてくれる薬。
 リクオは疑いもせず包みを開けると、置きっぱなしの鴆の湯呑みの番茶で流し込んだ。なんとも言えない薬臭さが鼻を通り抜けると、襖が開いて鴆が顔を見せた。
「よぉリクオ、お待ちどう…」
「鴆」
 リクオが振り向けば、鴆が一升瓶と盃を手に立っていた。……が、何やら、表情が堅い。
「リ、クオ、おめぇ…ソレ飲んだのか!?」
 焦るような様子の鴆に、リクオは顔色ひとつ変えず。
「あぁ、飲んだけど……いつもの薬だろ?番茶で飲んだらまずかったかぃ」
「番茶なんか関係ねーよ!それぁお前……媚薬だぞ!?」
「ビヤク?」
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