20180812

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日が変わるころが一番活動的になるのはやはりあやかしの身であるからだが、どうもここ最近の夜風はべったりとなまぬるい。薬鴆堂のあるじは薬草の手入れに苦労していた。

猛暑日だ酷暑日だと人間が騒ぐのをやや冷めた目で見てはいたものの、なるほどこの熱帯夜は人ならざるものでも不愉快である。

深い新月の闇から、うっすらと月光が覗き、その呼吸に合わせるかのように彼の気配が立ち込めた。

「よう」
ひやりとした夜風を運んできた彼を振り向けば、彼の手には上等な酒、そして身の丈ほどもある氷柱が足元に。

「物理か」
「なんだ、物理って」

いや、彼のまなざし、纏う妖気は、紛れもなく涼やかだ。

巨大な氷柱を運ばされたお付きはそそくさと帰った。ささやかなぬるい風も、氷柱の下では涼風となった。
「冷やでどうだい」
酒を差し出した彼の笑みは、無邪気で。



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