story

□二度目の季節
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 年は変わり巡り、また、あの時と同じ季節になった。

 初めて肌を重ねた時から、一年になる−−そう鴆は呟いた。
「そういや、そうか」
 鴆の布団の中で、妖の姿のリクオは機嫌良く笑う。中からもぞもぞと顔を出し、隣に寝転がる鴆を見た。
「な、だってまた、あの花が咲いてるからよ」
 微笑んだ鴆と、じゃれ合うように唇を触れ合わせる。情を交わしたままの素肌は、温かくて心地良い。

「お前ェを初めて抱いた時も、こんな香りでいっぱいだったからなぁ」
「よくそんな事覚えてんな。オレなんか、……」
 初めて抱かれた時の事を思い出し、リクオはほんの少し頬を染めた。
 正直、細かくは覚えていないのだが、それは初めての行為にまるで余裕がなかったせいだろう。あまりにもうぶだった自分は、今思えば照れ臭くて仕方ない。

 鴆は、目を逸らすリクオを抱き寄せて、その銀髪を優しく撫でた。
「なんだって覚えてるさ。お前ェとこうして過ごすようになったらさ、季節が…今までと違って見えるんだよ。ひとつも見逃せねえ。ぼやぼやしてたら、置いていかれちまうからさ」

 やけに饒舌な鴆を窺い見れば、寂しげに笑んでいる。

 先が長くないとわかっている彼は、常に全身全霊で生きている。リクオはその魂に強く惹かれたのだ。
 いつ逝くか知れない彼の魂すべてを、受け止めてやりたい。

「重てぇ奴」
「お、重いって」
 悪戯っぽく言えば、鴆が少しうろたえる。間をあけずにリクオは擦り寄ると、
「でも、てめぇのそういう重てぇの……、嫌いじゃねえんだ」

 好きだと言うことは簡単なようで、けれど許されてはいないから。

「鴆のそういうの全部、気に入って……ここに居るんだからよ」
「……かたじけねぇ」
 抱かれた意味を、ここに居る意味を。
 君が生きた証を欲して、夜毎求め合う事を。
 誤解なく分かち合っていたい−−出来ることなら、長く永く。

 たとえどちらかが先に立とうとも。あの花が咲くたびに、共に過ごした季節が来るたびに、色褪せず思い出せたら。
 リクオは花の香りの中、いとしい彼のぬくもりと共に眠りに落ちた。




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