story (R18)
□ねこののろい
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浮世絵町のはずれで、リクオはその猫又と出会った。
見かけは普通の猫と変わらないが、尻尾が二股に分かれている。夜の闇に身を隠し、フウフウ唸っては妖の姿のリクオを威嚇する。恐らくは、まだ猫又になって間もないのだろう。
この時代に新しく妖怪が生まれるなんて珍しいことだ。心細いのかもしれない。猫又の事なら猫又、化猫屋に連れていってやろう。
リクオがそう思って手を伸ばすと、案の定引っかかれた。それでも何度か素手で捕まえようとしたが、すばしっこい猫又に痺れを切らし、とうとう畏でビビらせて捕まえるという強行手段に出た。
妖怪になったばかりの猫又は、リクオの畏にあてられて気を失ってしまった。やれやれとため息をついてそれを抱き上げると、リクオは化猫屋へと向かった。
気絶したままの猫又を良太猫に預け、引っ掻き傷を手当てして貰おうと薬鴆堂を訪れた。庭に降り立ち、鴆の部屋の前で妖気をあらわせば。
「よう、リクオ」
気付いた鴆がすぐに障子を開けて、顔を出す。上機嫌の彼にひらひらと腕の傷を見せて、
「怪我ぁしちまったにゃ、診てくれにゃいかぃ」
「………ああぁぁああぁゴフゥッッ!!」
怪我にも語尾にも驚きすぎて、鴆が勢い良く吐血した。