アイテム2

□台風
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ばたばたばた。

「きゃっ!」
「おわっ!?」

ポケットに両手を突っ込んで、考え事をしながら歩いていた不動はばたばたと向こうから走ってくる人物の気配に全く気付かなかった。
ただでさえ宿舎の窓枠はガタガタと揺れ、外は強い雨と風だ。些細な音はこれでかき消されてしまう――そのため、まるで少女マンガの一コマのように、不動と音無は盛大にぶつかって倒れた。

「ってぇ……」
「いたたた……ごめんなさい……」

ぶつかった拍子に飛ばされたメガネを探して音無の手が床を彷徨う。
運悪くそれは不動の倒れたすぐ傍にあったので、仕方なく拾い上げて彼女の前に突き出した。

「おい」
「あ、ありがとうございます」

メガネを受け取りかけ直した音無と目が合うと、彼女は今更ながら驚いたように声を上げた。

「あっ!不動さん!!」
「あん?」

そして続けて何か言おうとして――彼女はそれを飲み込んだ。

「……っ!ごめんなさい!!」

勢いよく頭を下げ、再び走り去ろうとする音無の腕を不動はほとんど反射的に掴んでいた。
小さな悲鳴と共に進もうとする身体が引き止められ、その反動で不動の方に引き寄せられる。倒れないように――というより彼女が自分の問いに答えられるように――彼女の肩を掴んで支える。かなり近い距離で正面から見つめ合うことになったが、不動は気にせず詰問した。

「――待て。なんだよ、言いかけてやめんな」

正面から、しかもかなりの至近距離で睨みつけられ、音無が少なからず動揺した表情を見せる。怯えを隠す作り笑いを浮かべて、彼女は答えた。

「えっと……お兄ちゃん、知りません?」



――予感が確信に変わる――
不動は不機嫌に顔をしかめた。



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