アイテム2

□家政婦フクさんの陰謀
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朝。
いつもと変わらぬ朝。
……そのはずだったというのに。

「うわあああああああなあぁぁぁああああんじゃこりゃああああああああ!!」

鬼道の悲鳴は小さな室内に響き渡った。
わなわなと震えながら鬼道は窮屈さから外れたパジャマのボタンを慌ててつけ直そうとして。
ばちーん。

「イテッ!!」

ボタンに返り討ちにあっていた。

「おにーちゃーん?どうしたのー!?なんか
今すごい声きこえたけど」
「は、春奈!?来るな!!」
「えっ!?どうしたのお兄ちゃん!!入るよ!?」
「駄目だ!入るな!!」


――ガラッ!


「みっ……見るな!!」
「見るな!って、そんな布団にまるまってたら見えるものも見えないじゃない」

鬼道は布団の端を掴んで断固として外界に触れることを拒絶していた。

――妹――春奈にだけはこんな姿を見せるわけにはいかない――!

春奈が部屋に入ってこちらに歩いてくる足音が聞こえる……

「……お兄ちゃん……」
「来るなと言っただろう!春――」

鬼道の言葉が言い終わらぬうちに。
べりっ。

「!?」

あれだけ全身全霊をかけて抑えていた布団をいともたやすく引きはがされて、鬼道は一瞬何が起こったのか理解ができなかった。しかし、開かれた視界には実の妹の姿が一面に映っていて――。

「はっ、春奈っ!こっ、これは――」

両腕で隠そうにも、なおさらに溢れる見事な胸を露に、鬼道はしどろもどろになってあとずさりをした。だが、春奈は冷静に鬼道を追い詰めると……

「はっ、はる、はるなっ……!?」
「……お兄ちゃん、好き……」
「―――!!!」

あろうことか、鬼道の唇にキスをした。
まさかの急展開に真っ赤になる鬼道。
その躯体に覆いかぶさる妹の身体。
鬼道は次はどうなってしまうのかと、きつく目を閉じて全身を硬くした。
しかし、いくら待っても「次」の何かは来なかった。
そこで、おそるおそる目を開いてみると……

「春奈……?」

鬼道の身体の上から聴こえる規則正しい呼吸。
眠ってしまったのか?いや、この場合気を失った、というのが正しいのだろうか?
もう、何から何まで全く理解ができない。
とりあえず上に圧し掛かっている春奈の身体を横に静かに寝かせてやりながら、なんとか今の状況を整理しようと頭を働かす。
――が、何一つわかるわけもなく。
鬼道が少し半泣きになったところで、携帯の着信音が鳴った。
携帯を開いてみる。知らない番号からだった。
だが、何か虫の知らせのようなものを感じて、鬼道は通話ボタンを押した。

「――もしもし?」
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