アイテム2

□神のみぞ知る
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とある夏の暑い夜。
世界が注目するFFI(フットボール・フロンティア・インターナショナル)が開催されているライオコット島、ジャパンエリアの日本宿舎の一室。
二人部屋になっているその部屋の中から、気だるそうな少年の声と、それに呆れる真面目そうな少年の会話が聞こえる……

「あちぃ」
「クーラーのかけすぎは体調を壊すぞ」
「ねみぃ」
「寝てもいいが、そしたら次の試合は俺の指示に従ってもらうことになるぞ」
「腹へった」
「食堂に行け」
「鬼道ちゃん行ってきてよ」
「……って、不動!貴様は少し黙ってちゃんと考えられないのか!?」
「あんだようっせーなぁ……テメェの方が何倍もペラペラしゃべってんじゃねぇか」
「誰のせいだと思ってるんだ」
「へーいへい」

床に広げられたサッカーコートを模した紙とメンバーの名前が書かれた駒。
その中から不動は自分の名前が書かれたものをつまみあげると、用紙の外の床に置いた。

「そんなわけで、俺は次ベンチってことで」
「ふざけるなよ不動!」
「なんだよ、俺の力が必要なら必要ってそう言えよ」
「貴様ッ!!」

ごっ。
鬼道が不動に掴みかかるより早く、不動が鬼道を組み伏せる。
鬼道の後頭部が床にぶつかって、鈍い音を発した。
仰向けの状態で不動にマウントポジションを取られ、彼の嫌味な笑顔で見下ろされて鬼道は眉根に酷く皺を寄せる。振りほどこうと全身の力を振り絞ったが、あっさりと不動にねじ伏せられてびくともしなかった。

「ヘッ、……久しぶりに見たよ。お前のすンげぇ悔しそうな顔」
「はな……せっ……!!!」

心底楽しそうにくつくつと笑う不動。
鬼道は諦めず束縛から逃れようと抵抗して声を荒げたが、それをさらに挑発してくるように、不動は正面から顔を近づけてきた。視線を合わせまいと横を向いた鬼道の耳元で不動の低い声が響く。

「なぁ、お前が一番されたくないこと、してやろうか?」

何のことだ、と声には出さず、鬼道は横目で睨みつけた。
ニヤリと笑った不動の唇が妖艶に動いた。


――裏切り、だよ。


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