アイテム2

□彼の笑顔が見られる日まで
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「お疲れ様お兄ちゃん。はい、タオル」
「ありがとう」

練習を終えた鬼道に、妹の春奈がタオルを持って駆け寄ってくる。それを受け取って鬼道が微笑むと、春奈が照れたように微笑み返す。

二人は幼い頃に両親を飛行機事故で亡くしてしばらくの間児童施設で育ったが、その後兄の有人は影山総帥によってサッカーの才能を見出され鬼道財閥の跡取り息子として、妹の春奈は一般家庭の音無家へとそれぞれ養子にもらわれ、離れ離れになっていた。
こうして二人また一緒の時間を過ごすことができるようになったのは、何者にも代えがたい幸福である。

もっとも、そこに辿りつくまでには簡単に語り尽くせない壮絶な困難があったのだが。。。

今の自分があるのは、サッカーと、そして日本代表のキャプテン・円堂守のおかげであるに間違いなかった。

「あ、そうだ。久遠監督が後で不動さんと一緒に監督室に来い、って……あれ?そういえば不動さんは?」

春奈がグラウンドに目を泳がせる。鬼道も一緒に周囲を見渡したが、不動の姿はどこにもなかった。

「もー!すぐ不動さん一人でどっか行っちゃうんだから!」
「俺が探しに行こう」

不動の行きそうな場所は大体想像がつく。おそらく、見つけるのにそんなに時間はかからないだろう。
と、春奈が驚いたような目でこちらを見ていることに気付き、

「どうした?」
「う、ううん。お兄ちゃん、本当に不動さんと仲良くなったな〜って」
「仲良くなったわけじゃないさ。ただ、理解しただけだ」
「それでも、不動さん前よりずっとチームに溶け込めるようになったし。いい雰囲気だと思う。頑張ってね、お兄ちゃん!……あ!でも、不動さんに『単独行動は慎むように!』ってちゃんと怒っといて!」
「ああ、言っておく」
「それじゃ、私は夕飯の支度に行くから不動さんをよろしく!」

そう言って宿舎へと駆けて行く春奈を見送って、鬼道は不動探しへと出かけた。
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