アイテム
□閉鎖の中で
1ページ/5ページ
「――おい。」
「なんだ」
「――あんでこんなことになってんだよ」
「……それは俺が知りたい。」
――事の発端は一時間前にさかのぼる。
今日はいつもより早めに練習が終わった為、不動が新しいサッカーソックス等の購入に行った先での事だった。
練習場から一番近いから、という理由もあっただろうが、その店内で偶然にも鬼道と出会ってしまったのだ。
そこまでならまだいい。
用を済ませ、帰ろうと乗ったエレベータので「また」しても出会ってしまい、
さらに――
「……いつになったら出られんだよ」
「今すぐに向かうと言っていたのお前も聞いてただろう」
「あーもう警察とか呼んじまえよ」
「圏外だ」
「……チッ」
舌打ちをして、不動はイライラと床に胡坐をかいて座り込む。
『……』
無言が続く。
不動が携帯で時間を確認すると、こうなってからすでに二時間が経過していた。
エレベータの緊急連絡機能を使用した最初の連絡以来、外からの連絡が取れない。
おまけにサッカーショップが地下二階ということもあり、地上に出る途中で止まってしまった為、窓はついているものも外がどうなっているかすらわからなかった。
完全な密室。
ああ、きっとこのエレベータ会社は某会社のように問題になるだろう。
そんなことを思いながら、不動は階段を使わなかったことをこれ以上なく悔やんでいた。
人の声などがあまり聞こえないことを考えると、おそらく中途半端なところで止まっているのだろう。
用がすんだらとっとと帰って早く寝ようと思っていたのに。
小さな溜息を洩らし、ちら、と鬼道を盗み見る。
不動と対角線上の隅に鬼道も同じような格好で腕を組んで座っていた。
寝ているのか起きているのか、ゴーグルをつけているせいでいつも通りわからなかい。
「おい、」
沈黙に耐えられず、不動が言葉を発した
まさにその瞬間。
がくんっ!
「!?」
突然照明が消えたかと思うと、次に感じたのは奇妙な浮遊感。
ダァン!!!
「――っ!?」
耳を劈くような金属音と激しい衝撃が全身を襲う。
何が起こったなんて理解する間はなかった。
全てはほんの一瞬の出来事だった。