アイテム2

□暇を持て余した家政婦の遊び
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「か……んとく……っ!」

掴まれた腕はびくともしない。
後ろ手でドアノブを探り鍵を開けようと試みるが、それはとっくに先も試している。
開かない。何故か内側にあるはずの鍵がないのだ。
鬼道の記憶では、久遠監督の部屋は内側に鍵がついていたはずなのだが。
そもそも、外側からしか鍵がかからない部屋等というものは、牢獄か、もしくはそれと同じ目的を持つ部屋しかありえないと思うのだが――
腕を掴まれたまま逃れることもできずに硬直していると、久遠のもう一つの手が鬼道の腰あたりに伸びて、鬼道の視界が半回転した。

「うわっ……!?」

一瞬で、鬼道の身体は久遠の腕の中に納まっていた。――丁度お姫様抱っこの状態で。

「はっ、離してくださいっ!離して!!」

足をじたばたするも、なんの効果もなく。鬼道は数歩歩いた先でゆっくりと降ろされた。
ふかふかとした感触――久遠のベッド。
その上に覆いかぶさるように体重をかけてくる。
下半身から、じわじわと。
重なり合う、体温。

「おか……しいですよっ……監督……こん、な」

監督の、目が、唇が、近くなる。
ゴーグルを貫いて真っ直ぐに見つめてくる瞳。
吐息が、かかる。
――その時、鬼道は一つの可能性に辿り着いた――こんな、ありえない出来事。そんな事が有り得るのは――過去の記憶、経験。ああ、思い出したくない――それは、ある一人の女性――

「フクさん……こんなことをっ……またアンタだろう!?はやく監督を元に戻せ!」

『それには及びませんでございますわっ!』

「!?」

予想以上に早く返ってきた返事は、予想外の場所から聞こえてきた。

「よっ……よいしょっ……どっこら……せっ!」

鬼道いる真下、つまり、久遠監督のベッドの下から。
つっかかる巨体をなんとか外に出して……どうやって、ここに入ったのかは謎である。

「ひぃあっ!」

そうこうしている間に、首筋に久遠が顔を埋めてきて、鬼道は悲鳴を上げた。

「そう!いいでございますわ!久鬼!書こうと思っていたのでございますドキドキw本当は久円にしようか悩んだのだけれども、やっぱり鬼道さんが受の方が書きやすいでございますからしてっ!」

「ちょっ……やめっ……監督も目を覚ましてくださいっ!」

「無駄でございますわっ!そうそう、久鬼もよいのですが、映画を見てしまったらついつい絡ませたくなってしまいまして……」

そう言ってフクさんが『パチン』と指を鳴らすと。

「さあ、入ってきて下さいまし!」

彼女の呼び声に、静寂を保っていたドアの鍵がかちゃり、と回る音。部屋に入ってきたのは――

「ブレイク組、残りのお二方でございますっ!」
「え……円堂、豪炎寺っ……!?」


そこに居たのは紛れもなく円堂と豪炎寺本人達であった。

「鬼道、楽しそうだな。いいなー」
「これが楽しそうに見えるか!」
「久遠監督が羨ましい」
「じゃあお前が代ってくれ!」

……期待はしていなかったが、やはり正気ではないようだ。ぐぎぎぎぎ、と必死に手で突っ張り棒をして監督の密着を堪えながら、鬼道は敵しかいない部屋に視線を巡らせた。

(誰か……誰か助けてくれ……!)

「久遠監督との絡みはまた後にして、先にブレイク組の絡み行きましょうでございますか――」

いつの間にかメモ帳とスケッチブック、そして三脚付のビデオカメラを設置して、フクさん。
彼女の提案に、円堂と豪炎寺の二人が笑顔でこちらに近づいてくる――

「だ……だれか……」

久遠から手を離す事も出来ない。動くこともできない。――八方ふさがりとは、まさにこの事――
ベッドにのし上がってくる二人。四人分の重みを受けて、みしみしとベッドが酷い音を立ててしなった。

「鬼道」
「ひぃあっ!」

ぺろりと耳裏を舐められ、全身に鳥肌だ立つ。

「美味い」
「ンなわけあるかっ!」
「いいな豪炎寺俺もー」
「私もまだ食べていないのだが」
「――んんっ!」

叫ぶ為に開いた口。久遠に一瞬のうちに塞がれて、舌の、ぬるりとした感触が気持ち悪い。

「んんんんん!」
「あー!監督ズルいっ!」
「んー!」
「じゃあ俺はこっちをいただくとするか」
「んー!!!」

そういった豪炎寺の手が、鬼道のズボン――下半身に伸びる――「じゃあ俺は乳首をもらうな、監督ちょっと場所ずれてください」……という円堂の声――不覚にも、触れられた局部が――彼女の、歓喜の声が耳に痛い――

「んーー!!」

もみくちゃにされてずれたゴーグルを直すこともできず、塞がれた口で悲鳴さえ上げることもできず、終いには死にたいとすら思ってしまった。




――その時である。




ダァンっ!





『!?』

「何奴でございますかっ!?」

破壊する勢いで開かれたドア。
そのけたたましい音と、巻き起こる風に、部屋の中にいた誰もの動きが止まった。




「――この話、裏モノにさせてたまるかよ――なァ、鬼道ちゃん?」




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