アイテム2

□暇を持て余した家政婦の遊び
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「おせぇ……」

練習をしようと言ってきたのは向こうのはずなのに。不動は苛々としながら部屋の中を歩き回っていた。
同室の彼の姿は見当たらない。
先にグラウンドに行ってるかと思いきや、窓の外から見えるそこには誰の人影もない。

「…………」

不動は何も言わず、部屋を後にした。

今日の全体練習は午前中のみで、午後は自由行動になっていた。その為、今現在の必殺技の強化や新必殺技の開発をしようと言い出したのは鬼道であった。昼食を食べたら始めよう、そう言っていたのに。

昼食の献立がハンバーグのトマトソース煮込みであることを知り、それを放棄してこんな時の為に買い置きしていたカップ麺を自室で食べた。
あんな赤いグロテスクなモンを食うくらいなら死んだほうがマシである。
そんなわけで。食堂で食事をしている鬼道待ちなのだが、その彼が一向に戻ってこないのである。
グラウンドに誰もいないことを併せて考えると、皆で何か話をしているのだろうか?FFIのチームとしての重要な話ならば、必ず不動も呼ばれるであろうからして、そうでないということは、ただの雑談なのだろう。それならばこちらも興味はないし、別にいいのだが。

 ……それにしても、遅すぎる。

自分から言い出した約束ぐらいは守って欲しいものである。このことは貸しにしといて、後で都合のいいように利用してやろうと思う。

(……さぁ、どうしてやろうかねぇ)

両手をポケットに突っ込みながら階段を降りていると、その先に見馴れたオレンジ色と目つきの悪い(人のことは言えないが)二人が通るのを見かけて不動は声をかけた。

「おいキャプテン」

普段からそう呼んでいるわけではないが、なんとなくからかうようにそう呼んでみた。
『キャプテン』という言葉に反応した円堂が、こちらを振り向く。

「どうしたんだ?」
「……うちの天才ゲームメーカーくん知らねェ?」
「さぁ……知らないな。豪炎寺知ってるか?」
「悪いが俺も解らない」

『知らない』と首を振る二人に、不動は少し間をおいてから、また質問をした。

「……じゃあ、他の連中はどうした?」


――すると。


「さぁ……知らないな。豪炎寺知ってるか?」
「悪いが俺も解らない」

「…………」

聞き覚えのあるやりとりに、不動はいくらかの吐き気を覚えて眉間に皺を寄せる。
しかし、不動はあえてそれを指摘することはせずに、彼らに最期の質問を投げかけた。

「お前ら、これから何処にいくつもりだ?」

幸い、その質問の答えはちゃんと用意されていたようで、先ほどとは別の返答が返ってきた。

「俺達は久遠監督に呼ばれて、今から監督の部屋にいくところだ」
「そうか。邪魔してわるかったな」

歩みを戻す二人とすれ違う。
確かに彼らの向かう方向には監督室がある。

(久遠監督……か………)

遠ざかる二人の背中を見つめながら、不動は声に出さず独りごちた。
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