アイテム2

□家政婦フクさんの陰謀
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『おはようございます鬼道さん、素晴らしい朝でございますわね』

携帯の向こうから聴こえたのは――忘れたくても忘れられないあの声。

「……フクさん……また貴方ですか……!!!」
『いやですわもう、Mrs.Fでございますわよ』
「何を今更……どうでもいいですが、早くこの身体を戻して下さい!あと春奈を元に戻して下さいっ!!!」
『女体化!それも一つのロマンでございますっ!』
「じゃかぁしいっ!」
『ちなみに、春奈嬢には何もしていませんわ。この部屋に入ると何故か無性に鬼道さんを襲いたくなるように暗示をかけてあるのでございます!』
「なっ……!?」
『ちなみに、鬼道さんが元に戻るためには、三人の男性とのキスが必要でございます。ですから、とってもシャイでゲイな鬼道さんの為に、部屋にそのような暗示をさせていただきましたでございますっ!これで鬼道さんは何もしなくても勝手に向こうから押し倒されてムフフフフ――』
「シャイはともかく俺がゲイではない!っていうかそもそも何のためにこんなことを!?」
『ああ、そうそう。今後の試合に支障をきたすといけないと思いまして、鬼道さんにキスをした人は気を失ってその時の記憶もなくなるようにしておきましたから、どうぞご安心して楽しんで下さいでございます☆』
「誰が楽しめるかぁっ!!」
『あと、女性はカウントされないので気をつけて下さいね☆』
「ちょっ、フクさん!?おいっ――」

ツー、ツー、と単調な電子音が悲しく鬼道の耳を木霊する……


「ちくしょう……どうしろというんだ……」

おそるおそる鏡に映った自分の全身を見る。
程良く膨らんだ胸、長いまつ毛、綺麗な腰のくびれにふくよかに丸いお尻……心なしか声もいつもより高い気がする。さらにいつもちがう思考や仕草も――

マントで隠せばなんとか外に出られるかとも思ったが、彼女のことだ。その際の対応策も無駄にされてるに違いない。ヘタな動きをすればそれこそ取り返しのないことになり兼ねない……結局諦めて鬼道はベッドに腰を下ろした。傍には眠る春奈の姿がある。
もうすぐ朝食の時間。春奈も鬼道もいない食堂で、何らかの異変を感じてここにやってくる人がいるのは容易に想像がつく。
逃げることも隠れることもできない。なんだろう、こういう表現を。踊り食い?いや、違うか。とにかく、出口を塞がれた状態で鬼道は気が気ではなかった。

――と。

「おーい、鬼道〜」

ドアの前から聴こえる円堂の声に鬼道は慌てた。

「あっ、もう少ししたらすぐいくっ!」
「――え?鬼道??」

慌てながらも普通に返事を返したつもりだったが、円堂には鬼道の声に聴こえなかったらしい。はっと口を塞いで鬼道は頭が真っ白になった。

「鬼道、どうした?具合でも悪いのか?入るぞ??」
「いやっ!まっ、まって円堂!!」
がらっ。
「き……どう……?」
「やっ……く、くるな円堂!!」
「鬼道……」
「ひっ……!」

迫りくる円堂に片腕を掴まれ、振りほどこうにもキーパーの力に敵うわけもなく、あっさりと両腕を掴まれて壁際まで押しやられてしまう。
「はっ、放せっ!円堂っ!!目を覚ませっ!」

必死の抵抗も全く虚しく。

「……鬼道、可愛いな」
「ちょっ、え、えんどう……まっ……んん――!!」

唇を奪われ、円堂の生温かい舌が侵入してきたかと思うと、突然円堂の身体がずるずると鬼道にもたれかかってくる。なんとか円堂の身体を支えながら引きずって、ベッドに放った。気持ち良さそうに寝息をかいている円堂を恨めしく思いながら、鬼道は濡れた唇を拭いていた。
(……畜生、円堂、のやつ……)
不覚にも円堂の奴結構上手いじゃないかとか思って紅潮しながら、鬼道は開きっぱなしの部屋のドアを閉めようとした時!

「……鬼道?」
「……ご、うえん、じ……」
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