アイテム2

□真夏の空の真下
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† † †

気がついてうっすらと目を開けると、白い天井と、白いカーテン。とにかく『白』が目に映った。

「気がついた?」

そしてそこに“赤”が加わった。

「ここは……」
「雷門中の保健室だよ」

そうか、と小さく呟き緑川はこうなった経緯を思い出した。
自分でもそのうちこうなるだろうとは思っていたのだが、自分を傷つけずにはいられなかった。
凡人の自分では、限界を超えた練習でもしない限り、代表に追いつくことはできないだろう。
そう、目の前にいる彼には――

と、

「…基山!?なんでお前がここにいるんだ!?」

がば、と起き上がって、叫ぶ。頭がガンガンと痛んだ。
今はFFI真っ只中。向こうには宿舎や商店街も用意してあるし、戻ってくる必要なんてないはずなのに。
すると基山は何故驚かれているのかよく分からないといった顔で、

「里帰りだよ。八月でお盆も近いしね、家族に逢いにきたんだ。」
「そうか…」

共に育てられた孤児院の『お日さま園』でも基山はお父様や、その娘である瞳子に群を抜けて可愛がられていた。なんでも亡くなったという実の息子に酷似していたかららしいが……エイリア時代には、それが実に顕著に現れていたと思う。

確かに、自分よりも基山の方がサッカーの才能もあると思う。
妬んでいるわけではないが、嫉妬心がないかといえば嘘になる。
だから、どうしても基山に対してだけはどうしても他に比べて対抗心を抱いてしまい、素直に接することができなかった。

「ただいま」

ふいに言われた言葉に、緑川はわけがわらなくなった。
基山に視線を返すと、彼は微笑んで、


「だって、家族だろう?ボクらは」

「か…ぞく……?」


脳裏に浮かぶ過去の情景。お父様、お日さま園のみんな。
途中かエイリアンの真似事なんておかしなことになってしまったけれど、みんな共に長い年月を一緒に過ごしてきた大切な仲間に違いない。

だが、考えたことがなかった。“家族”だなんて。

そもそも、自分の本当の家族すらよくわからないのだから。
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