アイテム2

□始発電車
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タタン。
タタン。
タタン――

誰もいない電車内。
その静けさの中に響くリズムは、疲労した不動の身体を心地よく揺らし、眠りへと誘った。
 
タタン。
タタン。
タタン――

この光景は珍しくもなく繰り返される、日常。
いつも通りの事だった。
いつも通りに、いつも通りの夢を見る。
そう、決まって不動はいつも夢を見る。
ほとんど誰もいない車両。
まだ太陽の見えない薄暗い外の景色。
仕事を終えて、帰りに乗る始発電車。
温かな座席。
走り出して耳に響くリズム。
身体で聞くリズム、感じる振動。
そして見る夢。


『夢』


求めていたもの。
求めて、一度は手に入れたもの。


「―――」


(笑ってるんだ、夢の中の俺は)
(そう、心から。楽しい、って)
(考えられるか?『今の俺』よォ)


夢が夢であるならば、このまま眠り続けていたい。
そう、毎日思っていた。
夢がずっと醒めないでいるならば、夢は現実とすり変わるはずだから。
それを願って。
不動は今日も眠りについていた。



求めてはいけない。
求めてはいけない。
もし、求めてしまったのなら、









(……また、欲しくなるだろうが)






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