もちもの

□ただ、這い上がって☆しろまめ様より
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わからせてやる
今まで俺を見下してきた奴らに
お前らなんかよりも
俺の方が強いんだということを

わからせてやるよ
俺を二流と言いやがったアイツにも

俺は、強いんだということを


バン!
ボールが目の前のこげ茶色をした木にあたり
その反動に従ってそのボールはこっちに返ってくる

それを再び蹴り返し、また別の木にあてる
近くにある木の幹は、何度もこのやり取りを繰り返したせいか
所々樹皮が剥がれ丸い模様が出来ていた

昨日降った雨の水分を吸った土が、スパイクにこびり付く
その重みを足で直に感じながら
再び返ってきたボールを蹴った

今までよりも遠くの場所に見えた
一回り太い木に真っすぐに向かっていく白黒の球体
返ってくるであろうその位置を計算して、少し前に体を出した
しかし

パァン!

それは木の幹に触れることすらなく止まった
ボールに触れているのは木ではなく、また
その下にある地面でもない
触れていたのは人間の手だった

「やぁ、いいキック力だね」

ボールを片手で止め、今は両手でそれを抱えた
長い金髪に、アイツと同じ赤い目をした奴
コイツは見たことがある
影山が作った世宇子中のキャプテンだ

「こうして会うのは初めてだね、不動君」

「こっちは何度か見たことあるぜ。世宇子のデータの中でな」

「あはは、それは情けないものを見られちゃってたんだね」

長い髪を揺らしながら
二コリとした笑顔でほほ笑んだ
そして次にキョトンとした顔をして

「なんで君はこんな所で一人で練習してるんだい?円堂君達は雷門のグラウンドにいたのに」

「はっ!あんな弱ぇ奴らと練習なんかしても、俺のレベルが下がるだけだろ」

「ふぅん、二流扱いされたのを気にしてるからかと思ったよ」

「…あぁ?」

「あそこには君のチームを負かしたキャプテンがいるし、それにあの人の最高傑作もいるしね。」

「テメェも俺を二流扱いか?使い物にならなくなった神様よぉ」

「嫌だなぁ、そこまでは言ってないさ。二流君」

「…喧嘩売ってんのかお前」

「冗談だよ。練習の邪魔しちゃってるみたいだから、僕はもう行くね」

スタスタと軽い足取りで近づいて来て、ボールをポンと俺の手に置いた
そして横を通り過ぎる時にボソリと囁く

「君も僕も、あの人からすれば二流なのにね」


振り向きざまに、手に持っていたボールを足元に落とす
地面に触れる前に、自分の足でそれを拾い上げ
長い金髪目がけて蹴り飛ばす

しかし背後を狙ったというのにボールはヒラリとかわされて
固い木の幹と衝突する

「ふふ、そんなに怒らないでほしいんだけどな」

「今ここで確かめてみるか?この俺が二流かどうかよぉ!?」

「いいや、遠慮しておくよ。そんなに焦らなくても近い内に僕とは闘えるさ」

「ちっ…まぁいいか、それまで負けたときの言い訳でも考えとけよ」

「そうだね、それも面白そうだ。じゃあ、その時を楽しみにしてるよ」

それじゃあね、と片手を軽く振って
また背後を見せる
長い髪が足を進める一定のリズムに従って左右に振れる

「楽しみにしとけよ、俺は二流なんかじゃねぇってことを思い知らせてやる」

一度振り向き、また二コリと笑ってアイツは木の陰に消えていった
やがて足音も聞こえなくなって、足元には動くことのなくなったボールが転がっていた

わからせてやる
自分を神だとか言ってるふざけた野郎にも
俺を二流とか言いやがった影山にも
試合ではベンチ固定だとか思ってるチームの奴らにも
そして、鬼道にも

わからせてやる
俺は強いんだということを
俺にはチームの誰よりも優秀だということを
俺一人で、どうにでもなるということを

どんな綺麗ごとを並べても
所詮弱肉強食
勝てばいいんだ、負けには何の意味もない
勝たなければ、誰にも評価されることはない

ボールを足の裏にぴたりと触れさせ
コロコロと遊ばせる

トン、と
ボールを上空に浮かせて
何度目かわからないほどに
それを蹴り飛ばした

当たった幹は今まで以上に深くえぐられていた

「わからせてやるよ、俺の力を」

大人しく足元に返ってきたボールを
傷ついていない木に蹴りつける

新しい幹の剥がれる音が
やけにリアルに聞こえた。



fin.
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