書物庫

□天泣 ―てんきゅう―
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 守りたかった。
 ただ守りたかった。
 世界、なんて大きなものじゃなくて、ただ君を。君が住むから、この大地を。
 君を傷つけるつもりなんて、なかった。
 なのにどうしてこんなことになったんだろう。
 誰よりも大切だと思った人に、仲間殺しの咎を負わせようとした報いか。
 あるいは、身勝手にアステルさんの……リヒターさんやリリーナさんの大切な人の命を奪った報い。それがどれほどの痛みを伴うものか、その身で知れと。
 それとも、口では割り切ったようなことを言いながら、彼女の優しさに付け込んでその心の中に居座ろうなんて無意識に考えた罰か。

 ――僕を手に掛ければ、君は一生僕を忘れられない――

 ごめん。ごめんね。
 許されるなんて思ってはいないけれど。それでも。ごめん、ね。
 失いたくなかっただけなんだ。
 君を。君の隣を。自分の居場所、を。僕、が生きたその証、を。
 うその名前。うその姿。それでも、僕、は。確かに存在していたんだと覚えていてほしかった。誰よりも、君に。
 分かっている。それはただのエゴだ。
 どんなに言い訳しようとも事実は変わらない。僕は君を傷つけた。
 守らなくちゃいけなかったのに。守りたかったのに。
 もう一人の僕にも、ひどいことをしてしまった。こっちの都合だけで封じ込めて、挙句ずっと守ってきたマルタに剣を向ける原因にして。
 やっぱり僕の存在は災いしかもたらさない。
 ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ な さ――――
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