文
□『夢』
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目を開けていても、目を閉じていても、見えるのはただの闇。ねっとりと絡み付いてくるような、粘着質の黒。
何処までも広がっているような、解放感。
四方を壁に囲まれているような、圧迫感。
二つの相反する感覚が、闇へと呑みこまれ、境界線を失っていく。
どんなに歩を進めようと、続くのは黒一色。
粘着質の黒に足をとられ、全てか億劫になる。
けれど、
―いかないと。
―さがさないと。
―みつけないと。
「あのこ」を、
気の遠くなるような長い時間、いや、誰もが呆れるような短い時間かもしれない。
ちっとも慣れてくれないこの闇に、いい加減飽きてきたとき、一つの光が見えた。
僕は目を開けているのだと実感した。
光が少しずつ大きくなっていく。
僕は歩いているのだと実感した。
―光は、少女の形をしていた。
髪も、肌も、瞳さえも、無垢で純粋な、美しい白。
少女の白く美しい唇と、僕の肉の色をした醜い唇が同時に動く。
「「違う。あなたじゃない。」」