短編
□It is always a side
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『お前が幸せになってくれればそれでいいさ』
そう言って笑った彼の顔が、今も忘れられない。
―――あの人は今も覚えてくれているだろうか…?
++ It is always a side ++
雪が降り積もる中、カカシは一人、酒酒屋の暖簾を潜った。
今日はクリスマスイヴ。
毎年この日は家族や恋人が居ない上忍・特別上忍・中忍達が集まり、酒酒屋で宴会が開かれており、条件に当てはまる者は強制参加の上、不参加の者はその日の全額を負担しなければならないという決まりまである。
カカシは男女共にモテるのだが、未だ特定の恋人を作ったことがない。
その為、毎年この日は強制的に参加させられているのだ。
カカシが店内に入ると、奥の座敷の中で一際騒がしい一室があった。
「アハハ…今年もやってるねぇ…」
その騒がしさに苦笑してそう呟くと、カカシは迷わずにその部屋へと進んで行く。
忍び連中で集まる宴会の場合、その店で一番騒がしい部屋に行けば100%間違いないのだ。
その証拠に、その部屋の襖を開くと見慣れた顔が並んでいた。
入り口のすぐ近くに座っていたイビキが入ってきたカカシに気付いて声をかけてくる。
「遅かったな」
「いや、ちょっと任務が長引いちゃってさ」
「どうせあんたの遅刻が原因でしょ〜?」
奥の方に居るアンコが間髪入れずにそう叫んできた。
素晴らしい程の地獄耳だ。
アンコの言葉にカカシはハハハと笑って言葉を濁すと、座る所はないかと目で探る。
「カカシ、隣空いてるぞ」
聞き慣れた声に気付いてその声のした方へ目を向けると、アンコよりさらに奥の方でアスマが手を上げていた。
カカシは隣が空いているのを確かめると、直ぐにアスマの元へと移動する。
「アスマ、ありがとう」
カカシがそう礼を言って座ると、「丁度空いてたからな」と言ってアスマは苦笑する
少し照れたのか、酒で赤くなったアスマの顔の赤みが微かに増した。
カカシがそれを見て嬉しそうに笑っていると、アスマは側にあった空のグラスに手を伸ばし、それに麦酒を注ぐとカカシの方に差し出して来る。
「貰っていいの?」
「駆けつけ一杯ってヤツだ。まぁ、飲めよ」
アスマのその言葉に、カカシは素直にグラスを受け取ると、礼を言って一気に飲み干した。
生き返るような感覚に、カカシは自然とぷはっ!と大きく声を上げる。
それを見たアスマは、麦酒の瓶を差し出して来ながら面白そうに笑う。
「相変わらず良い飲みっぷりだな」
「アハハ、どうも」
カカシはそう言って笑うと、アスマにグラスを差し出す。
そうして新しく継ぎ足された麦酒を、今度はゆっくりと飲みながら、カカシは何気なく周りを見回した。
向かい側に居るゲンマは、野球拳で負けたのか、素っ裸になって下腹部を座布団で隠して居り、その対戦相手であろう上半身裸のライドウがゲンマのだと思われる男物のパンツを頭に被っていた。
アンコの方に目を移してみると、アンコは紅と二人でアオバを間に置いて絡んで居り、その近くをよく見ると、紅と同じ色の口紅のキスマークを付けられたイズモとコテツが顔を紫色にして倒れている。
見なかった事にして視線を逸らすと、泥酔したガイが酔拳を披露しているのが見えた。
目が合えば確実に絡まれるのが分かっていたので、ガイから慌てて目を逸らす。
それ以上見回すのが億劫になったカカシは、隣のアスマに目線を戻した。