旅館の縁側に腰掛け、外を眺める。

「すっかり秋ですなー」

隣に腰掛けている、愛しの彼……千堂武士の肩に頬をすり寄せながら、ゆるーい口調で話しかける。
武士は「せやね」と、簡単に同意の言葉を発し、あたしの頭を撫でた。
あたしは「んふー」と言いながら、武士に甘える。

「京都は良いですなー。旅行に来て正解だったねー」
「ワイはお前と一緒だったら何処でもええんやけど」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないのー!」

にへら、と緩く微笑み、武士の頬を抓る。武士は「イタタタタ」と、棒読みで言った後、あたしの両頬をお返しに抓ってきた。

「いひゃいいひゃい! なにをひゅる……ってあ」

縁側でジタバタしていたら、体勢が崩れた。
そのままあたしの上半身は、重力に従いながら後方へ倒れていく。

「あか」

武士が発した言葉は、あたしが床に後頭部を強打した音で掻き消された。

「いぃ……ったぁー……」

目の前に星とかうさぎさんとか宇宙船とかが飛んでいる。うさぎと宇宙船は嘘。

「大丈夫か!? 凄い音したで!?」
「んがぁー……一応、大丈夫」

武士の顔が、あたしの目の前にくる。
あたしは少し武士を見詰めた後、武士の首に手を回し、顔を近付け、そのまま唇を押し付けた。

「……なんや、いきなり」
「あたし今唇カサついてるから、武士に潤して貰おうと思いまして」
「は?」
「というのは冗談で。武士を味わいたかったのです」
「……アカン、我慢出来ひんわ。部屋戻るで」

武士はあたしを抱き起こし、そのまま抱きかかえる。

「あのう、武士さん。お姫様抱っこで部屋まで戻るのですか?」

これは流石にあたしでも恥ずかしい。

「早よ戻りたいねん」
「なんで?」
「お前があんなことぬかすから我慢出来んくなったんやド阿呆!」
「おおう……。全く武士は野獣ですなー」
「黙っとれ!」










縁側













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